先日、サラリーマンが多く集る新橋駅前で「音の聞き分け」に関するインタビューをしているラジオ放送を聞きました。
会社内で『事務室のドアを開閉する音で社員の誰かがわかる人』や『廊下を歩く音やパソコンのキーを叩く音で誰かが分かる人』、なかでも特にエンターキーの叩き方は人それぞれクセがあるようで、『その音で社員の誰かを聞き分けられる人』などが登場していました。また、家庭内でも同様に、玄関のカギを開ける「ガチャ ガチャ」という音が慌ただしくて、カギを探して開けるのが家内である、など、他にも娘や息子にもそれぞれ音に特徴があってそれが聞き分けられるのだと答える人も登場し、さらには階段を上がる足音やスリッパで歩く音などでも家族の誰かが分かる人もいました。仕事熱心な猛烈社員の一面と、家族思いの家庭を愛するお父さんの一面を垣間見られる様々な答えがありました。
かくいう私のサラリーマン時代はというと、会社や家庭での音の聞き分けなぞは考えも付かない無神経な男でした。しかし、視覚障害になってからは、家族の音の区別がつくから不思議です。いつの間にか自分も音を記憶し、音に対して敏感になっているのだなぁと思いました。以前もお話したとおり、私の日常生活の中で、自分の持ち物には「すず」を付け、品物を区別する聞き分けを行っています。外出先での自動車やバイクをはじめ、電車、信号等々を聞き分けられるようになるまでには相当の時間がかかりました。
自分でも驚いた音の聞き分けの1つに、スーパーでのレジ音があります。レジカウンターに並び、順番を待っている時、数台が整然と並んでいるレジのバーコードを引く発信音「ピー ピー」が、それぞれ違うことに気がつきました。店員の方に確かめてみると「隣の音と混同しておこる通過ミスを防止する為に、少しずつ発信音を変えている」とのことでした。この話を同行援護従業者研修生に「ご存知でしたか?」とたずねてみたところ、ス-パーのレジでバイトをしたことのある受講生が、「レジ担当の注意事項で、『自分の音を記憶して下さい』と説明がありました」と教えてくれました。皆さんは知っていましたか?今度、買い物の時、そのお店も音を変えているか、耳をダンボにして聞いてみて下さい。
今回のラジオインタビューでの聞き分けでは、「本当ですか!?」と思わず聞き返してしまいたくなるような内容も。『瓶ビールの王冠を開ける音「スポー」でビールメーカーが当てられる』、『プロ野球中継でバッターが打った音でヒットかファールか判断できる』という人達もいました。また、どこまで正確かは分かりませんが、趣味が昂じたこんなニュースも先日ありましたね。ある警察官がパトロール中、窓に吊るした鳥かごで鳴いている鳥の鳴き声が狩猟禁止野鳥だと聞き分け、摘発したと…。
生きて行く為に音の聞き分けは案外重要なことであり、視覚障害になってさらに自分でも音に敏感になっていることは、自然な成り行きかもしれません。でも、ビール党の私にもビールの栓を抜く音でメーカーが分かる人がいるとは知りませんでした。まだまだ修行が足りませんので、今年の夏は美味しいビールを堂々と飲める努力目標が出来ました。
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