私が子供の頃、町内に一人か二人は白い杖を使う方がいたように記憶しています。でも最近、あまり見かけなくなったように思うのは私の気のせいでしょうか?
私なりに原因を考えてみたのですが、田舎よりも都会のほうが、昔よりも今のほうが自動車が頻繁に走っています。そのことで、交通事故に巻き込まれる可能性が高くなり、“外を歩くのは危険だ”と本人も家族も外歩きをしない、させないのではないかと考えました。
道路交通法第二章の第14条に「目の見えない者、幼児、高齢者等の保護」があり、第1項「目の見えない者(目が見えない者に準ずる者を含む)は、道路を通行するときは、政令で定める杖を携え、又は政令で定める盲導犬を連れていかなければならない」とあります。ちなみに、政令で定められた杖の色とは、白または黄色です。
昨今、運転免許を取得した方のなかにも『白い杖を使う人=目が不自由な人』だとは知らないで運転している方がいるのでは…と思うことがあります。たまに後方からスピードを落とすことなく私を追い越していき、とても怖い思いをすることがあるからです。このような運転手には再度、道路交通法を勉強していただきたいものです。
私自身白い杖を使うことで、目の障害者であると宣言することに最初は抵抗がありました。しかし、白い杖を使わないことは、自分だけでなく周りの方にも、ドライバーにも迷惑がかかるということに気付き、必ず外出時には携帯するようになりました。白い杖は、私の身を守る役目を果たし、相手の方にも迷惑をかけない社会生活をするためのルールなのです。
私は道路の右側を歩いている時、後ろから自動車のエンジン音がしたら立ち止まり、白い杖を自動車に見えるよう自分の後ろ側に回し、背に立てかけて視覚障害者であることをアピールすることにしています。ちなみに、今では自動車のエンジン音で大型自動車か自家用車かの聞き分けも出来るようになりました。エコ時代に入り、電気自動車が街に増えてくると、エンジン音が静かになるので、今以上の注意力が必要となることでしょう…。
さて、音がしない乗り物の一つに自転車があります。自転車に乗っている人は追い越しの機会を見計らい、素早く追い越していきますが、私自身も注意しないといけないのは、突然右寄りに方向を変えないことです。自転車と鉢合わせをして、怪我をしたことが何度もあり、大切な白い杖をこれまで3本も折りました。このような経験を経て、今では方向転換する際、事前に方向転換する側の手を挙げて、相手に意思表示するようになりました。これも学習することで行き着いた解決策です。
ここでひとつ皆さまにお願いしたいのは、白い杖の直前を横切らないでください。私の白い手(杖)が折れてしまいますので・・・。この白い杖は、先に当たる物や音で位置と距離を確認することのできる大切な情報源であり、私の体の一部でもあるのです。
左手(白い杖)には赤い血こそ流れていませんが、私の体の一部として重要な役目を果たしています。右手より少し長い左手、血圧が高いのもそれが原因かもしれませんね(笑)。
白い杖の使い方についての講習は特にありません。おそらく各々が使いやすい方法を優先するものだからだと思っています。私も自分流に使えるようになるまで2年かかりました。自分に適した長さ、お出かけ用途に合わせた材質、携帯に便利なタイプの物など、種類も豊富にそろっていますので、お好きな杖をお選びください。
どこのお店でも販売している品物ではありませんので、予備品として2本は準備しておくとよいでしょう。これからも「白の力」にお世話になります。
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