・個別事例による諸様式の作成
今回は、生活支援だけの利用者です。事例だけで見ますと要支援に近い利用者のようですが、実際は、認知症が進み、物忘れが多くなってきています。排泄に関しても、自分ではどのようにしたらよいかわからずにいます。
しかし、自立心が高く、他者からの介入は嫌っています。家全体に尿臭がしますが、居室には入れてくれません。布団は濡れていると思われますが、家族も入れない状態です。
最近では、ようやく訪問介護員に話しかけてくれるようになってきました。プライドを守りながら、掃除を介在にして清潔な環境の中で暮らせるよう目指しています。
【事例概要】
- 氏 名 等:
- 青 葉 吾 郎(仮名) 昭和2年9月1日生 90歳 男性
- 疾 病:
- 頸部脊柱管狭窄症、高血圧症、腰痛
- 住 環 境:
- 戸 建 て(古い木造家屋)段差が多い
- 経 済 状 況:
- 会社員を定年後は厚生年金と貯蓄
- 家 族 状 況:
- 妻は5年前に他界、その後ひとり暮らし。子どもは2人。近隣に長男家族がおり、長男の妻が食事や通院の世話をしている。長女は夫の両親の介護があり協力は難しい
- 生 活 歴:
- 5人兄弟の末っ子として出生。両親は農業。高校卒業後会社員として働く。30歳で結婚、長男長女に恵まれる。休日や農繁期は家族で両親の農業を手伝っていた。定年後は妻と畑仕事や温泉等で楽しんでいたが、もともと寡黙で自分から話すことはない
ADL
- 起 き 上 り:
- 和式布団で寝ている。布団に肘をつき上半身を押し上げるようにして起き上がる
- 歩 行:
- 筋力低下がある、自宅内は家具や壁に手をついて、段差で躓くことがある。屋外は杖を使用するが持たないで出てしまうことが多い
- 排 泄:
- トイレで排泄しているが、失敗して床が濡れていることが多い。リハビリパンツを着用しているが、なかなか取り換えない
- 更 衣:
- 手先が不自由なため、ボタンを留めることがしにくい。ボタンのない衣類を選んで着ている
- 入 浴:
- 自力で入っている。洗っている感じは少ない
- 移 乗:
- ゆっくりと荷重をかけながら行う
- 食 事:
- 箸が使いにくいため、スプーンやフォークを使っている
IADL
- 調 理:
- ご飯を炊飯器で炊く、食品をレンジで温めることはできる。珈琲やお茶をいれることはできる。おかずは長男の妻が届ける(夕食)
- 掃 除:
- 庭の掃き掃除はできる。屈むことが難しいので、風呂・トイレ等屋内の掃除は難しい
- 洗 濯:
- 全自動洗濯機で自分でしているが、たたむことはあまりせず、そのままかごに入れてあることが多い
- そ の 他:
- 買い物が好きで近所のスーパーに行く、荷物が多い時は配達してもらう。市内に行くときはタクシーを使用、金銭管理は自己管理している。書類などは自分で、長男に相談することもあるが自分のことは自分でするという気持ちが強い。世話をされることは好んでいない。握力が弱く、字を書くことが難しい
- 健 康 状 態:
- 頸部脊柱管狭窄症により、手指の強張り、握力低下がある。血圧は高いが服薬で安定している。服薬は自己管理しているが薬が残っていることが多い。若いころから腰痛があり姿勢は前屈みである
- コミュニケーション:
- 他の人との交流はない。月2回の将棋の会に出かけることを楽しみにしているが、最近は休むことが多い
- 認知と行動:
- 日常生活で困るようなことはないが、レンジ内に置き忘れていることが時々あり、最近では鍋を焦がすこともあった。また、新聞や手紙をポストに入れたまま、鍵のかけ忘れ等もあるので長男の妻が見回りをしている
- 家族の介護:
- 長男家族が近隣に居住。長男の妻が夕食のおかずや受診の付き添い、日常のこまごましたことをしている。書類などは長男が協力。長女は年に数回訪問、日常的に電話で話をする。家族関係は良い。子どもたちは、本人の気持ちを優先にできることを協力したいと思っている
- 社 会 交 流:
- 月に2回将棋の会に参加。デイサービスを勧めているが「行きたくない」と言っている
<本事例における諸様式>
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