・個別事例による諸様式の作成
前回までは、訪問介護計画書の作成にあたり、特にICF(国際生活機能分類)の考え方を活用した情報収集(アセスメント)により、利用者の課題を明確にすることで、援助内容等を具体化していくことの大切さを述べてきました。
今回からは、個別事例による諸様式の作成例を掲載していきたいと思います。
本事例における諸様式の作成例がダウンロードできますので、是非、参考にしてみて下さい。
【事例概要】
- 氏 名 等:
- 町田時子 昭和6年5月10日生 85歳 女性
- 住 所:
- 東京都町田市1-2-3
- 診 断 名:
- アルツハイマー型認知症、高脂血症、変形性膝関節症
- 家 族 状 況:
- 長女(58歳)と二人暮らし。長女は就労しており日中独居。長女は受診、家事全般、身の回りの世話をしている。
- 生 活 歴:
- 神奈川県で出生、3人兄弟の末っ子。25歳で結婚、一女をもうける。
裁縫や編み物など手仕事が好きで色々なものを趣味で作っていた。本を読むのも好きで、歴史小説が好きだったようである。相撲が好きでテレビ観戦を楽しみにしていた。夫は定年後、妻とガーデニングや旅行を楽しんでいたが10年前に他界。時子さんは夫亡き後は散歩、ガーデニングや家事をしてきた。長年主婦として家事一切を切り盛りしてきたことが誇りであったが、5年前から鍋を焦がすなど、家事ができなくなり認知症が見られるようになった。長女は就労しているので介護認定を申請、要介護1と認定され、デイサービスを週3回、訪問介護を週2回利用している。
ADL
- 起 き 上 り:
- ベッドの柵につかまって起き上がる。立ち上がりもベッド柵につかまり、ふらつきがある
- 歩 行:
- 近くにある物につかまることがあるが、ほぼ自立歩行。屋外は一部介助、場合によっては車いすを使用。
- 排 泄:
- 自立しているが週に1~2回程度流し忘れがある
- 更 衣:
- 準備しておけば着ることができるが、声かけが必要。ときどき着方がわからなかったり、ボタンの掛け違いがある
- 入 浴:
- 髪、背中など介助。浴槽出入り時に足のふらつきがある
- 移 乗:
- ふらつきがあるので見守り。車への昇降は声かけ見守り
- 食 事:
- ほぼ自立、週に2~3回は見守り
- I A D L:
- 買い物、調理、掃除は見当識障害でできない。以前、鍋焦がしがあった。洗濯たたみは声をかければでき、自信を持っている。外出はひとりではできないが、娘と月に1~2回スーパーや喫茶店に行く。以前は家事全般をきちんとしていたが現在はやろうともしない。料理は得意だったが今は興味がない様子。
- 健 康 管 理:
- 食事は少量で好き嫌いがあり魚は練り物・エビのてんぷらが好き。甘いお菓子が好きでよく食べている。食事や飲水は声をかけないと食べない。咀嚼・嚥下は支障ない。歯は義歯で口腔ケアは声かけが必要。
以前はおしゃれでパーマやお化粧をしていた、洗顔や整髪は声かけ。
皮膚疾患はない。爪切りはデイサービス・娘が行う。服薬は手渡し。
- コミュニケーション:
- 視力・聴力は支障ない。意思表示はできるが、その場の雰囲気でしている感じ。昔の話はよく話す。お稽古ごとや子供のころ、子育ての話しなど。テレビも自分でチャンネルを回すのではなく、ついているのを見ている。
- 認知と行動:
- 時計は読めるが時間で何をすればよいかは理解できない。何度も「今何時か」と聞く。起床・就寝も言わないとわからない、日常生活全般へ声かけ・見守りが必要。介護拒否や暴言はないが、自分が何をすればよいかは理解できていない。電話がかかってくると出てしまい、娘が出なくてもよいといっても受話器をとってしまう。同様に訪問者が来ると出てしまうが、理解はできていない。
- 家族の介護:
- 娘は就労しているができることは協力している。介護が継続できるよう介護負担の軽減が必要。ショートステイの利用は現在では考えていない。介護者が一人なので自身の健康管理に気を使っているが、介護の継続について不安を持っている。認知症で見当識障害があるので日常行為に声かけ見守りが必要。
- 社 会 交 流:
- デイサービスの利用で他の人と交流している。趣味はガーデニング、読書、編み物、三味線など。以前は、夫の定年後も室内に小花を生けることや歴史小説が好きで読書をしたり、夫と旅行によく行っていた。足腰を鍛えるといって二人で近所を散歩していた。お墓参りや季節の行事は欠かさず行っていた。
<本事例における諸様式>
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