テレビ番組「はじめてのおつかい」を昔泣き笑いしながら見ていたときは、子供にとってその買い物がどれだけ大変であるかを我が子に置き換えて見ていた部分がありました。しかし今では、そこに登場する子供たちが自分に似ていると感じることがあります。
健常だった頃、買い物は楽しみの1つでしたし、会社員時代では日本から海外へ、海外から日本へと航空貨物の輸出入通関申告手続きといった職務に就いていたため、買い物には色々と関わりがあります。
少し難しい話になりますが、税関への申告書類には貨物の価格を記入する欄があり、課税のため適正価格でないと承認されません。そのため、当時の私はというと商品説明を店員にしてもらいながら情報収集をし、適正価格を覚えるという名目で銀ブラを大いに楽しんでいました。ちなみに大手デパートに出かけては1階から最上階までくまなく買い物をして楽しむ客ではありませんでしたよ。
また、低価申告を防止するために超格安であらゆる商品を販売している上野御徒町「アメヤ横丁」に出かけるのも好きでした。非常に混雑していますが、活気があって人と人との触れ合いも楽しいものです。そのため、このデパートの●階には何を売っている・・・この品物を格安で購入できる店はここ・・・など、お手の物でした。しかし最近は、各デパート特有の売り場が少なくなり、銀座デパートらしい風格や特徴が影を潜めてしまったようで寂しくも思います。
さて、話を冒頭のテレビ番組に戻しますと…、子供は母親からもらった買い物リストのメモを握りしめ、はじめてのおつかいに出かけます。途中、散歩している怖い犬を避け、お店に到着。店員にメモを渡し、同時に預かった虎の子のお金も支払い、レシートと品物を買い物袋に入れ、母親からの言いつけを守りながらもと来た道を一心に帰るわけです。
今の私もこれと同様で、店で買い物を楽しむこともなく、欲しい商品を店員に告げて購入するだけの「おつかい買い物」になっています。昔は、相手や自分が遅れても立読みが出来て時間つぶしになる書店での待合わせも多々ありました。そんな風に、店舗をうろうろしながら買い物を楽しむというウインドウ・ショッピングは、すでに過去のこととなり、今の私にはもはや死語でしかありません。これではいけない!と思い立ち、出来るだけ自分のことは自分で処理し、かつて買い物を楽しんだように、何か新しい楽しみ方はないかと、現在思案しております。
最近ではコンビニをはじめ、ドラッグストアに置いてある商品の種類も多く、一件のお店で目的が達成できるようになりました。一度、陳列されている場所を教われば、頻繁に買う牛乳、パン、弁当などの場所はほぼ同じで、自分で探すことも出来きるため利用するお店も限られるようになりました。「はじめてのおつかい」で、自分の探す商品が見つからず、泣きべそをかきながらお店の人にメモを渡す子供さんの悲しい気持ちは、今の私には「ズッシリ」と伝わってまいります。
妻は朗らかに笑いながら好きな番組だと言いますが、自分が好きでもない買い物、お店がわからない、行き着くまでの不安と恐怖を感じている子供の気持ちは、買い求める商品が店のどこにあるか分からず、自由に行動できない自分自身の腹立たしさと同じ気持ちだと思うのです。真剣に取り組んでいる子供の気持ちを大人達が笑いにしている番組、今の私は好きになれません。
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