私は、生まれ変わりを信じている。今度、地球に生まれてきたなら、何をやろうかと考える。できることなら障がい者にはなりたくない。
27歳のとき、私は親元を離れ自立生活を始めた。父は流し台を床の高さに合わせて作ってくれた。私が足指を使って料理をするからである。ある日父が長方形の砥石を持ってきてくれた。なぜ、ああいうものを父が持ってきたのかはわからない。そのときは、まだホームヘルパーの制度もなく、私たちはボランティアを必死になり探して暮らすほか術がなかった。
誰に包丁を研げと父は言いたかったのか、私は少し切れなくなった包丁を両足に持ち砥石を濡らしながら研ぎ始めた。砥石と包丁がこすれてシュッシュッという音がして包丁に太陽の光があたり、キラキラ輝き始めた。(とてつもない快感が生まれることを見つけた)と私の心は喜びで揺れた。
ボランティアさんが「こんにちは」と言って、部屋に入ってきた。私の足元を見て、目を大きくして床に座り込み、私の足を抑えて「小山内さん!!危ないからやめて」と言い、包丁を取り上げようとした。「いいから見ていて、私ゆっくり研ぐから、お願いだから見ていて」と言うと、彼女は手を握りしめて、ちょっと震えながら、私の足元をじっと見つめていた。
私は足を絶対に切らないように、全神経を足指に注いでいた。「今日は美味しいイカのお刺身だよ」と言った。その包丁は買ったばかりのように、美しくなりイカがよく切れた。
この経験から、もし障がいのない人間に生まれてきたなら、はちまきをし、着物と袴を着て刀を作っている自分の姿が見えて来た。2回結婚し子供を2人産み、世界中をまわって高級な刀を作り、高く売って暮らしていこうと私はずっと夢見ている。
私がスウェーデンで船に乗ったとき、赤い屋根の家が海に浮かび、赤いバラが流れていた。この風景はどこかで見たことがあると確信し、生まれ変わりが存在すると思った。生まれ変わりを信じたいが、地球では原発や温暖化など環境問題が続いている。もっと生き物が安心して生きられるようにしなければならない。