ホームヘルパー制度を真剣に勉強するためには、海外に行かなければいけないと思った。 だからヨーロッパでは、指折り数えきれないほどたくさんの国を訪問した。一般の福祉見学コースは断り、通訳の人に車で街中を走るよう頼んだ。障害を持った人を見つけると、すぐに「止めて!! あの人の家を訪ねてもよいかどうか聞いてきて」とお願い。すると、青い目のカラフルな電動車いすに乗った人たちが、すぐにOKして家に招いてくださり、美味しいお茶や作りたてのクッキーをご馳走してくださったりした。そしてその人たちと大学に行ったり、職場に行ったり、一緒に旅行をしたこともある。デートにくっついて行ったこともある。このやり方こそ、本当のケア制度が見えてくるのだ。私も障害を持っていたからこそ、彼らは受け入れてくれたのだと思う。
スウェーデンやデンマークでは、24時間ケア制度があり、職場や学校にもケアがつく。旅行に行くときもケアがつく。彼らのアパートは一般のマンションで、その3分の1程度が障害者や高齢者用になっている。外見からはどこが障害者用なのか分からない。この建築法が彼らのプライドだという。
障害が重くても一人きりの孤独な時間を味わうことは大切だ。そのために、床や壁のあちこちにヘルパーを呼ぶボタンがある。お風呂も台所もトイレもすべてオーダーメイド。ケアとは、人的ケアだけではない。部屋を使いやすく、ケアの人に負担をかけないようにするためにも、部屋の設計、使いやすいテーブル、使いやすいスプーンなど、全てがホームヘルパーと言えるのではなかろうか。若き日、私は足で味噌汁をつくり、茶碗に入れられたのだが、それをテーブルの上に置くことができなかった。ボタンを押せば静かに上がるテーブルがあったら、どんなに幸せか! と思っていた。するとスウェーデンで、私とまったく同じ脳性麻痺で足で生きている女性が、私の夢であったテーブルを持っていた。
「この部屋はドラえもんのようだ。何でも夢が叶う。日本もこうでなくてはいけない」
と心が燃えた。