毎月必要なヘルパーの時間数を決めるとき、私の場合は仕事中の介助者の時間は抜かれる。
私はNPO法人札幌いちご会の理事長なので、仕事をしている間も介助者が必要で、同伴しないで出勤することはない。私は言葉しか出ないが、原稿を読んでいただいたり、パソコンを打ってもらったり、講演会の場所(最近ではZoom)に連れて行ってもらったりして、仕事をこなしている。とはいえ、一番私が働いているのは、事務所ではなく、トイレに入っているときだ。トイレの中でいろいろなアイデアが浮かび、原稿のネタが生まれ、NPOをどう運営していくかも考える。私の労働の時間は、いったい何時間なんだろうと考えてみると、わからなくなってしまう。眠っているときだけが、休憩時間だと思うときさえある。
少しずつではあるが、職場介助者が認められつつあるのに、北海道では北大まで出ても、介助者がいないので卒業後、働き口が見つからない。たとえば重度障がい者がスマホでゲームをする間は介助者がいていいのだが、同じ人がスマホで仕事をするとなったら、その時間は介助者をつけてはいけないのだ。2019年夏に、れいわ新選組の二人の重度障がい者が参議院議員として当選したというのに、彼らでさえ仕事中に介助者をつけることができていない。国会での仕事中は、参議院からその予算が出ているそうだ。テクノロジーが進んで、重い障がい者も働けるチャンスが生まれてきているのに、それでも依然として「仕事中に水を飲んだり、食事をしたり、姿勢を変えたりすることのできない人は働くな」ということだ。全国で重度の障がい者は公務員試験を受ける資格を持っていない。この状況だから、職への道は断たれ、生活保護を受けて暮らす障がい者が多い。
私は、高校生のときに、職場実習で老人ホームに自分でタイプライターを持ち込んで手紙の代筆をした。それでおひねりをいただいた。実習なので、ポケットに突っ込まれたミカンは食べたけれど、お金は置いてきた。でも、そこから原稿を書く下地ができて、今もこのように講演をしたり、原稿を書いて暮らしている。
障がい者ができる仕事は、作業所で箱を組み立てたりすることだけではない。仕事の進捗を健常者と比べるのではなく、もっと仕事のあり方を社会で柔軟に一緒に考えていければいいのではないか、と私はトイレで考えた。