札幌はあたり一面雪が降り、車いす利用者にとっては外へ出にくい季節になった。(あまり外へ遊びに行けないなぁ。何をして楽しもうか)と暗い気持ちになっていた。いくらテレビやマスコミに出ても、講演会を行っても、本を書いても、ヘルパーをやってみたいという人が来ない。
これからどのようにして生きていこうかなと考えていたとき、合同就職説明会に採用側として参加した。優しそうな参加者の人に、施設の経営者が必死になり口説いていた。あまりにも口説かれすぎて疲れている人もいた。いちご会のような小さなヘルパー事業所にはだれも来てくれないだろうなと思いながらも、職員と一緒にビラを配ったり声かけをしていた。
そのとき、目がキラキラと輝く若い女性が来て、「小山内さんですか? 私、学校で小山内さんが出ているDVDを見たのです。先生からもいろいろ習いました。ぜひ働かせてください」と言い、椅子に座ってくださった。(あぁ、宝物がどこからか飛び込んできた!)というような思いがした。彼女は積極的にいちご会のことを聞き、サービス提供責任者と話していた。
それから1週間ほど経ち、彼女は私の家に来て、朝の10時から17時ごろまで私の生活を見ていた。少しだけ、ごはんを食べさせていただいたり、髪を洗ってもらったりした。手がまったく緊張なくぶれていない。自分のことのように行っていた感触があり、(あぁ、この子は学校で真剣に研修を受けてきたのだな)ということが肌で感じ取れた。私のほうが(彼女を逃すまい!)と思い、言葉づかいに気をつけたり、転んでけがをしたりしないようにと、心臓が高鳴っていた。彼女のお母さんがデイサービスで働いており、私のことをよく知っているという。(やっぱりマスコミに出て本を書いておくものね!)と、私は深く自分のおごり高ぶりを反省した。彼女が帰ったあと、ぐったり疲れてヘルパーさんの肩を借りて、ちょっとだけ眠ってしまった。「今日はよい日だった。ぼたん雪の空に花火をあげたいくらいだわ」と言うと、ヘルパーさんは「きれいな表現ね! 私もそういう思い、よくわかるわ」とおっしゃってくださった。
とにかくなんでもあきらめないことが、私たちが生きるうえで一番大切なことだと思う。これからももっともっと私は、いろんなアイディアを考え、社会に顔を出さなければいけないと思った。