両手が使えない私は、職場介助者を雇い働いている。職場での介助者といっても、トイレや食事や買い物も行う。出張に行けばお風呂も手伝ってもらう。今はこの原稿をパソコンで打ってもらっている。講演会のときは言語障がいがあるので、私の話した言葉を介助者が素早くパソコンに打ち、スクリーンに映し出している。日本中、世界中を一緒に歩かなければならない。大変だと言えば大変な仕事で、ちょっとおもしろいと言えばおもしろいのかもしれない。
今の職場の介助者が退職することになった。6年近く私の介助を担当してくれたのは珍しいことである。職場介助者は一緒にいる時間が長いので、心が疲れると思い、以前は1年か2年と決めて契約をしていた。でも私ももう若くはないので、長く雇った方がよいかなと思い実行に移したのがその方だった。私の手となり足となるということは、時には友達、時には黒子、時には他人になるということでもある。大変難しい仕事だが、彼女にはパソコンや雑誌のレイアウトから原稿チェックまでをお願いしていたので、そういったスキルも自然と伸びていったように思う。
まだ職場介助者の後任は見つからないが、40年間も働いてきたのだから「何とかなるさ」と思っている。しかし、あと3ヵ月くらいしかないと思うとちょっと焦る。色々なところに求人を出し、知り合いには電話をかけて頼んでいる。今の時代「介助」と言うと、なかなか来てもらえない。どう声をかけたらよいのか毎日考えている。でもこれまで私は、ヘルパー制度をつくったり、街に障がい者トイレを要求したり、地下鉄にエレベーターを設置するよう訴えてきた。「大丈夫さ。自分が真剣に生きていたなら誰か見つかる」という思いもある。強く生きていれば幸福はやってくる。辞めていく彼女も違う世界に行き、楽しく生きてほしいと祈っている。
「ケアの仕事が大好き」という人がいたら、どうぞお声をかけてください。