私は今新宿にある大学病院の眼科に月に一度通院をしています。 その医大は、昨年11月に新しい建物になりました。旧建物に比べてベッド数も増え、出入りする人の多さは都内の大型デパート並みです。新築となった院内は壁も床も白一色で、視覚障害者の私には区別がつきません。さらに言えば、3階にある眼科診察室までの誘導点字ブロックがないため、今までは1人で行けた診察窓口もこれまでと勝手が違い、なかなかたどり着けず新館内で迷子となりました。
院内をキョロ、キョロする自分を見かねてか、ある患者さんが親切に声をかけてくださり、総合案内窓口まで連れていってくださいました。窓口では、視覚障害者にとってこの新館が不親切な設備であること、また、何度も白い壁に突き当たり苦労した、と伝えました。すると、私のクレームに対しての返答はこうです。「総合案内窓口にお尋ねいただければ、案内できるエスコート担当者をお付けして案内致します。まずは窓口の係員に利用目的をお話しください」
なるほど。
また、診察待機時間の解消施策か分かりませんが、院内のあらゆる手続き、カルテ書類や記録情報類などといった全てのデーターが伝達システムになっていました。診察料の支払いに関して言えば、診察券を投入して表示金額を現金投入口に入れるだけです。ですが、視覚障害者には診察券の受け入れ口がまず分かりません。さらに料金表示も見えないため、やはりここでも手助けが必要です。これは視覚障害者だけに言えることではありません。通院患者の多くが高齢者なので、やはりエスコートする係員は必要です。とはいえ、最近の高齢者には息子や娘、孫など若い人が同伴するケースも多いようなので、このような最新システムでも何とか対応できているように思います。
私は、人手不足解消やスピーディーな情報処理のためのスマホアプリ導入には全く喜べません。なぜなら、音声での説明がないからです。今後の新築においては、通院患者の現状を理解した「エスコート設置」であれば大いに歓迎です。情報機械化にメリットがある一方で、デメリットを受けて苦労している人がいることも忘れないでほしいです。同時にやさしい理解者が増え、機械以上に血の通った人々の活躍があることを期待しています。