障害を負った当時は長い間家に閉じこもりがちでした。ですが、ひとたび発起し、ガイドヘルパーさんと一緒にお出かけしたことをきっかけに、外出に自信を持てるようになり、また家族とは違う人と、久しぶりに会話ができたことで元気になれました。今思うと、この出来事がその後の生活に劇的な変化を与えてくれたのだと思います。
ガイドヘルパーさんは、私と同じ状況の利用者と多くお付き合いをしているので、不満であった介助の解決方法についてもよく知っていました。これまでは家族に自分の悩みを話しても心配を増やすだけだ、と諦めていたこともガイドヘルパーの立場で、生きた経験談を話してくれるなど、とても勇気づけられました。
健康に生活していると、自分の好む・好まざるにかかわらず、ありとあらゆる情報がドンドン入ってきますが、目が不自由になると、ラジオが主体となる耳からの情報、もしくは自ら求めて問いかけるしかなくなります。話しかけてくれる人が少ないほど、必然的にえられる情報も少なくなるのです。そのため、なるべく私は自分から積極的に声をかけることにしています。例えば、『いつもの散歩道』で、犬の散歩をしている人に出会った時、立ち止まり「かわいい犬ですね」と話しかけてみるのです。自分の犬を褒められて、黙っている方は少ないでしょう。ここから会話が進み、最近の情報や思わぬ会合の集まりなどにお誘いを頂けることもあります。さらに、この日を境に相手の方からご挨拶を頂けるようにもなりました。
人付き合いが苦手な性格でしたが「自分から声をかける」ことは色々な面で大きな変化をもたらしてくれました。
ある時、ガイドヘルパーの受講生から「利用者の方に声をかけたが、顔を横向きにして返事をされたので、それ以後は声かけが怖くなりました」という話を聞きました。「障害の症状によって、人それぞれ視野も異なり、物が見える角度も違い、自身が見える方向に顔を動かし、返事をした姿勢がたまたま横向きになったのでしょう」とアドバイスをしました。
健常者のように「正面を見れば180℃に近い世界が見渡せるのではない」ことを自分自身が認識し、恐れず何度でも声をかけてみて下さい。
実は先日、私も歩道のない一般道の左側を歩いていると、対抗する人から「なぜ右を歩かないの!!」とお叱りを受けました。相手が右側通行をしているのに、対抗する私が左側を歩いていれば当然衝突するからで、本来歩く人は右側通行が正当です。視覚障害のハンデはありますが、交通ルールを忘れていたことに気付かされると同時に、しかしながら自分の右目が失明しており、どうしても左よりになってしまう症状があることをその方に説明してご理解を頂きました。
ところで、私が横断歩道を渡る時、大きな交差点は音声案内の小鳥が鳴くので信号が赤から青に変わったのがわかりますが、小さな信号機には音声案内がないので、しばらく様子を感じて自動車の音がしないことを確認して渡ります。ですが、信号無視して通過する自転車に音を信頼して渡ろうとした私が「ヒヤリ」とさせられたことが何度もあります。なかには親切に「青にかわりましたよ」と知らせてくれる人もいますが、青に変わっても何の声かけもなしで、しかも本人は信号無視で渡ってしまう人もいますので要注意です。皆さんもお忙しいとは思いますが一声「信号が青だよ」と声かけして頂けると助かります。家族からはなるべく歩道橋がある交差点を利用するよう注意されますが、上り下りの階段を考えると、つい横断道路を使ってしまいます。たくさんの声かけは望みませんが、横断歩道の信号が「青になりました」だけでも声かけをお願い致します。
そういえば、『いつもの散歩道』で「そのまま真直ぐ歩いて行くと100メートル先左側に‘犬の糞’がありますので、右側を歩いて下さい!」と、すれ違いざまに奥様から声をかけられました。毎度私の歩行を見ていただいているのでしょう!
嬉しい、最高の声かけです。「ありがとうございました!」
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