私が講師をしていた『視覚障害者ガイドヘルパー養成研修』には、様々な立場の受講生がおられました。親兄弟に失明された方がいらっしゃる方、定年後の仕事として福祉に従事したいと考えている方、介護タクシーの利用者に中途失明者がおられるので、安全に利用していただくため勉強にこられた方。少し変わったところでは、職業は消防士、仕事上何か役立つものはないかと自分を高める目的で受講された方などです。
しかし、やはりその大半は介護福祉施設に勤務されている方でした。近年、中途失明者の入居者が多くなり、その必要性から施設長より指名を受けて、もしくは、自ら勉強に来たということなのだそうです。その方達の介護施設での経験年数は2~3年が一番多いのですが、なかには5年以上の方もいらっしゃいました。さらに、一度も視覚障害者の介助をしたことがないとうかがって、驚いたことを覚えています。
全体的な年齢層としては40~50代で、介護ヘルパーに従事している“女性”が多かったと思います。視覚障害者ガイドヘルパーとしては、同性同士での移動介助の方がスムーズに行くと私は考えていますので、もう少し男性のガイドヘルパーの受講が多くなることを望んでおります。
このように多くの受講生との出会いがありましたが、なかでもとても印象深かったのが、研修1日目から講義ないで活発に質問をされていた方です。受講態度も良く、熱心さも一番目立ち、感心させられた模範生で、昼食時間に講師の間でも話題になるほどでした。全ての研修も無事に終わり、修了証書をお渡しして解散後、私が帰り支度をしていると「ありがとうございました」と挨拶をされました。
この声の主は噂の優秀な受講生ではありませんか!
その彼女曰く、いまはまだ状態も良好だけれど、いずれ中途失明者になることを医師から既に宣告されているとのことでした。「今何をすべきか」を自分なりに考えていた時、この視覚障害者ガイドヘルパー研修があることを知って受講した、とおっしゃったことに私はとても驚きました。その方は、講義中私がした中途視覚障害者としての体験談を通して、今何をやるべきか、そして失明しても皆さまという強い味方がいることを知ることができ、今回参加できたことを本当に良かったとおっしゃって下さいました。
当時「なぜ私だけがこんな障害を持つのか・・・」と憎んで憎んで、まだまだ毎日ふて腐れていた私とは大違いです。宣告されても前向きに考える強くて勇気ある受講生から、私が逆に勇気をいただき、また同時に、とても反省させられました。私自身、参加者の皆さまから毎回元気の源を頂いておりましたが、その方のお話には胸を打たれました。短い研修時間ではありましたが、感謝の言葉をおかけしてお別れ致しました。
「ありがとう、Sさん、お元気で!」
そして、今も、お元気でいらっしゃいますか?
◆セミナー申込はこちら
http://www.helpa.jp/course/course_list/