私は、視覚ガイドヘルパーの実務講習で、移動介助する為の『基本姿勢』を教えています。この『基本姿勢』とは、利用者に片手で介助者のひじの上辺りを軽くつかんでもらい、利用者より介助者が半歩前を歩いていく姿勢のことをさし、介助者が利用者より半歩先に危険を受け止められるスタイルとなっています。市販されている何冊かの指導書でも、ほぼ同じスタイルで掲載されており、共通して『基本姿勢』と呼ばれているようです。
『基本姿勢』とは言いながら、すべての視覚障害者に通用するものではなく、視覚症状や周囲の状況・環境によってその姿勢は変わってきます。例えば、年老いて目が不自由になった場合においては、腕を抱えて誘導した方が安心して歩いてくれるでしょう。施設内でのちょっとした誘導であればこの方法でもよいのですが、逆に長時間の外出となると、この方法ではお互いに疲れてしまいます。このような時に『基本姿勢』と言われるスタイルが役立つのです。
ここで、外歩きのポイントを2点紹介しましょう。まず1点目は、二人の信頼関係をしっかり築くこと。介助者は、利用者を危険な場所に誘導することはもちろんありません。とにかくガイドヘルパーさんを信じて身をあずけることが重要です。2つ目のポイントは、第2回のコラムでもお話した、自己紹介をかねた元気な声での挨拶です。これは“真剣に利用者を介護します!!”という気合いの表れにもなるので、とても大切なことです。
こうした外歩きのポイントをふまえて行う『基本姿勢』は、介助者だけでなく利用者にも教えることが大切です。そうすることで、お互い介助しやすく、されやすい状態になるからです。これまで、公共施設の会場に出かけても、誘導方法には差がありました。誘導する側の方法・受ける側の症状など双方に差がありすぎて、なかなか統一できないという現実があるのでしょう。このような対応に慣れているはずの眼科専門病院や大学病院内でも、介助の仕方が担当者によって違うので本当にびっくりしました。ある人は、私の白い杖を持ち、手を引いて誘導したのです!!白い杖は私の体の一部でもあるので、断りなく触れると痴漢扱いになりますのでご注意ください(笑)。
ある時、家内と帰省しようと東京駅でウロウロしていると、「何かお探しですか?」と若い女性の声がしました。そして、その女性は『基本姿勢』をとるための前動作である『掌を二度たたく』所作をしたのです。私は「お主、出来るな!」と驚きと同時に嬉しくなり、思わず声をかけてしまいました。聞いてみると、その女性は福祉大学の生徒さんだったそうで、サークル活動で勉強したとのことでした。
今後、たくさんのガイドヘルパーが誕生することで、ある程度統一された姿勢による誘導方法が広まっていけば幸いです。『基本姿勢』は介助者と利用者との間に常に一定の間隔が保たれるので、誘導されるまま歩けば利用者にとってはすごく安心出来る姿勢なのです。例えば、ダンスが踊れない女性でもスムーズに踊れるのは、エスコートする男性が上手に誘導するからですよね!?それと同じで、上手に外出できない利用者も『基本姿勢』さえ崩さなければ、エスコート役の介助者に誘導されるがままに動くことで、不安なく外出することができるようになるはずです。季節によって服装も変わりますし、お互いの身長差や雨の日などの条件により、腕を持つ位置に多少の違いはあるでしょう。でも基本は『基本姿勢』、それにそって利用者・介助者各々ペアでお互いに疲れない方法を考えていければよいのでは?と思います。
『基本姿勢』をマスターして、銀座をスマートに歩くペアにどこからか声がかかるかもしれません。 「よう! お二人さん !!」
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