一度ガイドヘルパーをお願いされると、同じご利用者さんからの依頼が多くなります。その理由は、ガイドヘルパーが介助の癖や話し方などを覚え慣れることで、ご利用者さんもガイドヘルパーさんに気を使うことが少なくて済み、お互いに理解しあえるメリットがあるからです。1日のガイドヘルパー行動を楽しくしたいのはお互い様ですよね。信頼を重ねて介助をしていくと、ご利用者さんから取り立てて聞き出さなくても、自然と障害経緯などを耳にすることがありますので、ガイドヘルパーさんからの質問はあえて避ける方がよいと思います。その中には、本人が他人には触られたくない情報もあるため、知り得た個人情報は必ず守るようにしましょう!
特に中途失明者の方は、これまで元気に働いていた方が大半で、目が不自由になっただけで、なんら他の人と変わりません。テレビや新聞を見ることは少なくなりますが、本人は一般の方と同じお付き合いを望んでいると思います。しかし、実際にはご利用者さんの外出は少なくなり、情報入手はラジオかテレビの音声が主体となります。また、色・物・形を理解することが難しくなるなど活動範囲は狭まり、情報収集能力も低下してしまいます。私も視覚障害になるまでは、珍しいものを探しにデパートや百円ショップによく出かけて行ったものです。楽しみが少なくなり、寂しい次第です。
そんなご利用者さんとの話題は、季節を題材とした話が一番無難だと思いますが、これまでの勤務場所の街情報・交通事情の変化・新商品ニュースや流行品情報など知っていることがあれば、お話しすると喜ばれるでしょう。また、街で見つけた視覚障害者に使い勝手がよさそうな用具や小物の入手方法なども、本人では調べるのが難しくなっているので話題として嬉しいです。情報をいただいてばかりでは恐縮なので、私からもいくつか話題を提供したいと思います。参考になれば幸いです。
老人ホームにいらっしゃる90歳を過ぎたあるお婆さんは、「夢の中で、戦時中南の島で戦死した兄が少しも歳をとらない姿で現れ、自分と一緒に新幹線の食堂車でカレーライスを食べたのよ」と話してくれました。これは、中途失明者が障害者になる前の状態で記憶が止まってしまっていることと同じだなと感じました。
また、世界的なピアニストになった辻井伸行さんのお母様の子育方法の1つで、色を理解させるために「りんごの赤」「バナナの黄色」と教えていた時、伸行さんが「じゃ、今日の風は何色?」と言ったそうです。大好きな“食べ物”に色があるなら、大好きな“風”に色があってもなんの不思議もありません。生まれつき光を感じなくても(晴眼者はそのことで悲壮になってしまいがちですが)、『彼なりの感覚や世界が広がっているのです』とお母様は語ります。
散歩している道で子供づれのお母さんとすれ違うことがあります。子供は3、4歳くらいでしょうか…!?履いているズックに笛が付いているので歩くたびにピーピーと音がして、近づいて来るのが音でわかります。興味を持って近づこうとしている幼児に、『眼の悪いおじさんだから道を開けないと行けませんヨ』とお母さんが話しかけています。これまでに出会ったお母さんの中には『○○ちゃん危ないからこちらに来なさい』と嫌がる子供を抱きかかえてよける人もいました。視覚障害者に対して機転をきかせた注意の言葉だとは思いますが、怖い人か危険な犬でも来たように話すのではなく、白い杖を持っている人にどんな障害があるのかを言い添えて、将来の福祉に対する理解者を育てようとする(!?)教育ママには感心しました。
日本では障害者に対する理解者がまだまだ少ないと言われていますが、最近は幼稚園で老人施設を訪問してのおじいちゃん、おばあちゃんとの触れ合いや、中学・高校でも介護体験研修の授業、福祉専門大学新設など明るい話題もあります。しかし、やはり幼児期から生活の中でそういうことを自然と教えるママが多くなることを望まずにはいられません。
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