年末には恒例の「NHK紅白歌合戦」がありますね。私は数年前に一度だけ観戦に出かけたことがあります。これを観覧するためには応募ハガキを出し、公正に抽選されて選ばれなければなりません。そして、当たるために応募ハガキを10枚以上出した憶えがあります。
1枚の当選ハガキで入場者は2名。妻はあいにく仕事の都合で休暇が取れませんでしたので、私一人で出かける事になりました。確か、当時の放送開始時間は午後9時でしたが、少し早い午後5時に家を出ました。JR山手線の原宿駅で下車し、NHKホールへと向かいました。駅前からいくらか歩を進めると、途中長い列を目にしましたが、何処かの新装開店か何かで、買物客が並んでいるのだと思い「ご苦労様」と少々冷たい視線を送りながらNHKホール近くまでやって来ました。すると、ハンドスピーカーを持った係りの人が、大声で「4列に並んでください!!」と叫んでおり、『はて…、この列の最後尾はどこなのかな』と辿っていくと、なんとこれまで見てきた新装開店の列がまさにそれで、最後尾に着くと原宿駅が目の前だったのです。
一度その列に入ると、あとは自分の自由は無くなり、ただ時間が来るまでその位置を確保し、ハンドマイクを持つ誘導者に従うしかありません。一人で並んでいる者は、少なくとも2時間以上は列を離れられない状態になるのです。入場時間が近づくと、ハンドマイクの係員が「列から離れないで下さい!列を崩さないで真直ぐ進んで下さい!」の連呼です。それでも、やっとの思いで玄関ホールまで辿り着くと、皆良い席を取るために我先に走る、走る。間髪入れず、ハンドマイクから「走らないでゆっくり進んで下さい!!」の連呼、連呼。例え目が見えていても、自分の意思では一歩たりとも進めません。一人の誘導者がまるでガイドヘルパー的役目をして、怪我のないように集団を介護している状態です。
着席までも色々あり、紅白観戦でホッとしたのも束の間、最後の曲「ホタルの光」が終わり、その余韻に浸りたいところではありますが、ホールから駅へ着くまでの時間がこれまた大変でした。帰りも行きと同じ駅であるJR原宿駅に、と思いましたが、またしても集団介護状態で、人、人、人のダンゴ状態となり、1歩進むのもやっとで、交通整理の警官が特殊車両上から拡声器フル音量にして、「進め!止まれ!右に!左へ!!」と誘導介助であります。こうなると目が見えない、見える、の問題ではなく、自分の意思や自由は全くありません。結局、私は人の流れに逆らう事も出来ず、川の流れのように自然に身を任せて進むことに。思いがけなく明治神宮境内に入り、初詣を。後ろから投げられるお賽銭が頭に当たる体験もし、なされるがまま、地下鉄表参道駅に押し出されたのでした。
昨年、渋谷駅前のスクランブル交差点で「DJポリス」の呼びかけ・誘導が、爽やかで歩行者との一体感も見事だと話題になりましたが、やはり一方的でなく、介護する人もされる人も共に理解し会えるガイドヘルパー誘導が大切であるのだと、当時を懐かしく思い出しました。
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