視覚障害者になる前は、家内と一緒に出かけるといつも「あまり早く歩かないで下さい!!」と言われていました。そのため、約束した時間があると、そのたびに少し早めに家をでていました。遅刻を避けるためとはいえ、毎回のことに「遅く歩く人と一緒に歩くのはいやだ」と口論もたびたびでした。
それもそのはず、以前の私は日本ウォーキング協会が埼玉県の東松山市で毎年秋に開催している「歩け歩け大会」の1日50キロコースに参加するほどの速歩だったのですから。早朝6時にスタートして、午後2時にはゴールするという相当の早さです。このコースで3日間150キロを完歩してきた実績があるので、私の歩調に家内が太刀打ちできないのはあたり前のこと。
しかし、今はその面影もなく、逆の立場になりました。これまで相手を敬う心を持っていなかっただけに、今まで家内に投げかけていた嫌味な言葉が、そのまま自分にお返しされてしまうこととなりました。世の中公平で、うまく出来ているものだ(笑)と感心しつつ反省をしております。
会社勤めをしている時は、会議開始10分前には場所に到着し、電車が遅れた時でも駆け足で間に合わせて、遅刻したことはありませんでした。
障害を負った今では、これまで通りのスピードで歩けるわけがありませんし、たとえ予定時間に到着できなくても、走ることは許されません。歩行は何よりも安全が第一なので、信号「黄色」では次の「青」まで待つし、電車の「ベル」が鳴ればかけ込み乗車は危険ですからしません。
階段の利用でも出来れば障害者用のエレベターはないか?と、設置場所を探すようになるなど、時間の余裕が必要であることは十分ご理解頂けると思います。
特に駅のターミナルをはじめ、町の繁華街を歩くには十分な余裕を持つことが大切。さらに目的地が初めての場合には、より時間がかかることを考慮しておかなければなりません。また、食事も駆込みで食べるわけにはいきません。
いざ出かけてみると、これまでは時間通り目的地に行けた場所でも、同じ所要時間で到着できないことを感じて頂ける事でしょう。そのため、予定の到着時間より30分から1時間は余裕を持って、出発時間を決めることを、私はお勧めいたします。
万が一、ご利用者さんと外出している際、ガイドヘルパーさんがこのままだと目的地到着の時間が間に合わないと感じても利用者を焦らせてはいけません。利用者が不安にならないよう、慌てず、冷静に介助する事が大切です。
それから、ガイドヘルパーさんは利用者に外出をはじめとして、“自分の力”で行動できる楽しみと自信を与えてあげるよう心がけてほしいと思います。
運動会の競技種目に「二人三脚」があります。この競技は、二人の呼吸が一つにならないと思い通りのスピードでは走れませんし、息の合った二人が「オイッチニ オイッチニ」と掛け声を合わせて、リズミカルに走る姿が美しいのも特徴のひとつです。ガイドヘルパーさんと利用者さんの関係は、丁度この「二人三脚」に似ています。応援する人達は美しい二人に「頑張れ!息が合っているよ!」と道をあけて下さると助かります。
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