「人参をぶら下げる」という言い回しがあります。馬に乗ったはいいが、一歩も歩かない馬に、乗ったまま棒の先に結んだ人参を馬の鼻先にちらつかせます。すると好物の人参を食べたいがために前へ前へと進む、という希望を与える馬術方法の例えです。
私は視覚障害者になって、外出できないと決めつけていました。希望といえば年間6回発売されるジャンボ宝くじを買い求めるくらい。もしかしたら億万長者になれるかも、と夢見る気持ち。抽選日までに誰もが抱くような宝くじ当選の夢が、私の希望でもありました。毎回夢破れても取りあえずはそれで満足だったのです。
しかし、前回のコラムでご紹介した通り、今回、自分自身に目標を立て、健康と自分に喝を入れることにしました。まずは日帰りや一泊でのバス旅行に家内の介護で出かけることからと考えました。以前は、好きだった旅行もダメだと思っていましたが、その他に希望を持たせるものはないかと自分なりに調べて、見つけたものが「船旅クルージング」でした。
これまでも船旅をした先輩達の話しは聞いていました。船旅はバス旅行と違い、最低でも10日間と長く、一年前から計画・予約するので、出発までの時間が夢と希望にあふれていると説明を受けていたのです。
早速、考えているより即実行の家内が船旅ツアーを探してくれました。日本1周の旅で来年の5月出航です。横浜、函館、秋田、金沢、韓国・釜山、長崎、徳島と寄港し、各港から観光バスで名所を巡り、最後はまた横浜港に戻るスケジュールです。
これまでは短期間での楽しみ方を模索してきましたが、今回の長期計画は、自分に夢と希望を与えてくれたのです。申込みをした今、来年5月までの健康管理に一層力が入ります。パンフレットを何度も読み返す自分は、まるで人参を前にした馬のよう。鼻先に近づく来年5月までの期間を楽しみに待つ今までになかった自分に出会い、目の前のことではなく、少し先に希望を定めて計画・行動をすることの良さ、またそこに向けて健康管理ができるなんて、なかなかいいものだと思います。
「船旅の次は何をしよう」と、失いかけた夢と希望を引き続き探し求めることも鼻先の人参かもしれません。皆さんも夢と希望を失いかけたら、長期先の目標をたててみてください。