"理想の家族像"を勝手につくってはいないか?
在宅に関わる介護職にとって最も大切なこと、それは、いうまでもなく利用者の自立支援です。
と同時に、在宅ケアでは施設ケア以上に、家族支援のあり方が重要になってきています。実際、利用者との関係づくりより、家族とのコミュニケーションに難しさを感じている人も多いかもしれません。キーパーソンと連携しようにも、肝心のキーパーソンが見つからない、最近ではそんなケースも珍しくないようです。
家族支援に感じる難しさ。それは、もしかすると私たち介護職が、無意識のうちに"理想の家族像"を思い描いているからかもしれません。
老親の介護が必要となったら、子世代が同居して仕事や自身の生活と両立しながら(あるいは犠牲にして)面倒をみる……血縁や地縁が強かった時代ならともかく、今の、そしてこれからの介護者にそれを求めるのは無理というもの。また、そのように無理を強いる介護は本人・介護者双方にとって幸せな結果になりにくいものです。
そもそも今、高齢者のいる世帯の22.5%は高齢者の単独世帯。高齢夫婦だけの世帯と合わせると半数以上が高齢者だけで暮らしていることになります。ほんの20数年前まで全世帯の半数近くを占めていた三世代世帯は18.3%と2割にも満たなくなりました。また、晩婚・非婚化にともない、親と未婚の子のみの世帯が年々増えていることも見逃せません(表1)。
多様化する家族のかたちを受け入れ支援していく
主な介護者をみると6割が同居の家族など等であるものの、4割は事業者やその他となっています(表2)。介護保険制度スタートからの10年だけをみていても、介護を必要とする人と家族の有り様は多様化しており、このデータもその一端を表しているように思います。
また、リビングウィルなどに象徴されるように、自分の最期をしっかり準備をしておきたいと考える人が、親の介護や看取りを終えた50代・60代の世代を中心に増加傾向にあります。老後の生活を共にするのも家族や親族に限らず、親しい仲間、事実婚のパートナーなど、人によってさまざま。私たち介護職は、その人にとってかけがえのない存在を見出し、心と心をつなぐ架け橋のような役割が求められているのかもしれません。
家族の危機に向き合い共に乗り越えることも
在宅の介護職は、生活に密着している分、家族関係の負の面に直面する機会もあることと思います。虐待のサインや、介護疲れ、介護うつなどの兆候にいち早く気づくべき立場にあることを、しっかり心にとめておいてほしいと思います。少しでも気になったら必ず、ケアマネジャーや地域包括支援センター、そして他職種と情報を共有し、連携しながら支援にあたることが大切です。
どのような状況に遭遇しても、利用者や家族に対して、「よい/悪い」「加害者/被害者」といった先入観や固定観念を持たないようにしましょう。今どのような声かけや、働きかけが自分にできるのか、どんな地域の人的・物的資源がその人の役に立ちそうか、アンテナをピンとはっていてください。
家族との関係は、利用者が亡くなった後のグリーフケアまで続きます。鋭い感性や豊かな人間性、それも私たちに必要な大切な資質です。