青葉静子さん(86歳、仮名、女性、要介護1)はひとり暮らし。近所に次女夫婦が住んでいて、週に2~3回、掃除・洗濯・重い物などの買物をしてくれます。デイサービスを週2回、訪問介護サービスは週2回買物、調理の内容で利用しています。
最近デイサービスを休むことが多いのですが、理由を聞いても「行きたくないの」と言うだけです。加齢による身体機能や認知機能の低下はあるものの、気になるような病気はありません。今日も呼び鈴を押し訪問すると、ベッドで寝ていました。「お天気が良いので買物に行きませんか」と話しかけると、いつもより小さな声で「行きたくないわ」と。どこか具合が悪いのかなと思い様子を伺いながら、ベッド横のくず入れを見ると菓子パンやお菓子の袋が捨ててあり、シーツの上にはクッキーがこぼれていました。食欲はある様子。
パジャマのままなので、温かいおしぼりを手渡し、化粧水・クリーム・櫛を持っていくとベッドに起き上がり、手慣れた様子で手を動かします。以前娘さんが持参した薄いピンクのマニキュアを見せると、うなずき指を広げたので、声をかけながら1本ずつ塗っていくと、「若くなった感じね、ふ…」と、やっといつもの表情になりました。爪が乾く間に着替えを用意すると、「カーディガンも出して」と言います。自分で着替えをし、「では、スーパーに行こうか」と。今からでは、時間が足りないのでは、と思いながら静子さんの気持ちを優先することにしました。
足元のふらつきもなくスムーズな歩調で、青空を見上げたり銀杏並木の紅葉を眺めたり、手を広げて深呼吸をする静子さんの姿は元気そのものです。スーパーでも、迷うことなく必要なものを手に取り、かごに入れていきます。惣菜やお刺身をかごに入れ、「今日はこれを食べるわ、ご飯だけ炊けばいいわ」と話し、健康や栄養バランスを考えながら選んでいる様子。気分がすぐれなかっただけと推測し、帰路は歩行バランスなどに留意します。帰り際に急に手を差し出してきたのでそっと握り返すと、強く握り返してきました。
どうしても時間内にサービスを終了させたいと思う気持ちが働きますが、利用者の生活スタイルや気持ちも多様で、日によってはうまくいかず、悩みます。計画作成の際に時間配分は考慮に入れてありますが、予定どおりにいかないのも当然と受け入れながら、基本を見失わず、知恵を働かせる応用力が必要なのだと思います。