長野ゆきさん(88歳、仮名、女性、要支援2)は、ひとり暮らしです。書類や金銭管理は年に2~3回訪問する、遠方に住んでいる姪が代行しています。長野さんは自立心が強く、家事全般をひとりで工夫しながら行っており、週2回の訪問介護サービスを利用。内容は、買物・掃除・調理・入浴の見守りです。
長野さんは最近、加齢とともに身体機能が低下し、足元のふらつきや体調の変化が目立つようになりました。「風呂場で少しふらつきがみられた」「歩く速度がゆっくりだった」「無表情だった」「動作がゆっくり」「今までと違う雰囲気だった」「会話が通じないようであった」「味見をしたとき、頷くだけだった」「食事を残すようになった」など、訪問介護員からの気になる情報が増えてきたので、様子を見に行くことにしました。
ゆっくりとした動作に、口数や表情も乏しく、確かに数ヵ月前とは違う様子でしたが、生活そのものに支障があるわけではありません。受診もしましたが、病気もなしです。ケアマネジャーや姪にも共有連絡しつつ、長野さん自身は「このままこの家で暮らしたい」と希望されるので、状態を把握しながらサービスを継続していくことになりました。
やがて歩く速度が落ち、足が上がらず、すり足、手引き歩行での移動、椅子に座るのにも支えが必要になりました。食事は好物を聞いて、小さなお皿に盛り付け、果物やケーキを添えてお出しします。「あら、美味しそうね、素敵だわ」と言いながらゆっくり口に運ぶ長野さん。自宅での入浴が難しくなってきたので、デイサービスの利用を勧めたのですが、「家のお風呂がいいの」と言い、こちらはハラハラしながらの見守りです。
このようなサービスが半年くらい続きました。介護度は更新で要介護1に。医師からは「そろそろひとり暮らしは難しいのではないか」と言われ、本人に伝えると「覚悟しています。皆さんに迷惑をかけるかもしれませんが、このままにしてほしい」と強い口調での返答となり、医師もそれ以上は言えませんでした。
訪問介護サービスが増加されるに伴い、訪問介護員のアセスメント力が重要になります。サービス提供責任者は観察の仕方や記録、情報の伝え方等をその都度アドバイスしました。たくさんの情報を取捨選択することや、伝え方を明確化することで、他職種との連携が短時間かつスムーズになりました。こうして長野さんの「家で暮らしたい」を共有しながら、支援することができたのです。