前回、前々回も「利用者の主体性」について例を挙げてお伝えしましたが、いかがでしょうか。あなたのまわりにも同じようなことが起こっていませんか?
介護保険の要介護認定調査項目にすら「介護に抵抗」「問題行動」という言葉が並んでいます。このことからも分かるように、まずは「自立支援」という考え方や「主体性」「尊厳」がなかなか浸透しない厚い壁があると認識することが必要です。
考えれば昔からの日本の暮らし方は逆でした。「流れに任せる」「口出すな」「一蓮托生」「長いものにまかれる」といった考え方がなじみ深く、いずれも意見表明を自らすることは好ましくないというものでした。
介護の世界にもよく聞くセリフが残っています。
- 「かゆいところに手が届く」「まめまめしくお世話する」「黙っていてもよく気がつく」というほめ言葉。
- 「面倒みてもらっているのに注文が多い」「まったく可愛くないんだから」という非難言葉。
- 「細かいことを言うと嫌われるよ」「かわいいおばあちゃんになっていないと粗末にされるよ」という忠告言葉。
いずれも利用者には「受身でじっと黙って待っていればよい」という教えを意味し、介護者には「任されているのだから、あれこれ聞かずにすすめる方がよい」という教えとなってきました。
「自立支援」「主体性」「尊厳」という考え方は旧来のお世話型介護から180度違う考え方や暮らし方を求めるものです。利用者側、介護者側、双方とも不慣れな現状です。ここには介護者の方が頭を切りかえて、「ご本人の意向からサービスが始まる」ことを徹底して働きかけて下さい。必ず反応があるはずです。