ご利用者さんとの関わり
「してあげる」ではなく「させていただいています」という気持ちで接しています。
事務作業は集中して一気にこなすのが神田さん流。デスク周りはすっきりと。
色分けされたシフト表。自分がどの時間にどの担当か一目で分かる。
―神田さんがこの仕事でやりがいや楽しさを感じる瞬間ってどんな時ですか?
ご利用者さんとお話しをしている時でしょうか。お互いの昔話をしたり、冗談を言い合ったり…。仕事のようで仕事でない、会話そのものを楽しんでいる瞬間は楽しいです。また、何気ない会話がケアに役立つこともありますよね。認知の症状が出始めたご利用者さんがいて、『そう言えば、あの時こんなこと喋っていたから、それが今症状に表れているのかな?』とか、今だけじゃない過去のその方を知るということは、その方に寄り添う、理解するきっかけにもなります。
各職員の椅子には、ご利用者さんお手製のクッションマット
よく使う資料はデスクの回転式ラックに。すぐ取り出せて便利。
―なるほど。では、ご利用者さんと接するうえで、心がけていることって何かありますか?
例え認知症であっても、人生の大先輩である方達。尊敬の念を持って接しています。今の私達は何でも機械化されて生活も楽じゃないですか。でもご利用者さんたちは、何でも手作業で暮らしてきた時代。きっと大変なご苦労があったんだろうな、と思うので、「おむつ交換させて悪いね」と言われたりもしますが、むしろこちらが「ごめんなさいね」という気持ちになります。介護職は「してあげる」ではなくて、「させていただいています」が正しいんだろうなと思いますよ。
神田さんの冬のマストアイテム。みぃのひざかけ。
机の引き出しには、制汗スプレーとボディミルク。身だしなみは大事。
―それは深い…。神田さんのなかで印象的なご利用者さんっていらっしゃいますか?
「目が覚めた時、『今日も生きててよかった~』って思うんだよ」とおっしゃったご利用者さんがいます。私達の年代にはない“生への喜び”を素直に口に出されていて、ハッとさせられました。目線が変わるというか、本当に勉強になります。その方は寝る時も「今日も元気でいられました。ありがとう」と私達に言ってくださるんですよ。感謝の言葉は有り難く、明日への活力にも。また、認知症の方に「あんたが頼り」と言っていただいたのも嬉しかったです。自分なりに認知症のことを勉強して、よくよく観察して…というのが何らかのかたちでご利用者さんにも伝わったのかな、と思えたので。
2Fにある入居者さん達の休憩スペースには、マッサージチェアも!
―生きている実感、というのは、今の私達が本当はもっと意識しなければいけないことなのかも…と今お話しをうかがってふと思いました。では最後に、今後の展望をお聞かせください。
まだまだ至らない部分も多いので、ここで学びつつ、成長していければいいな、と。あとはどんな時でも、ご利用者さんやスタッフの立場に立って物が考えられる人でありたいです。
編集後記
遠くから玄関先まで、駆け足気味で私達を出迎えてくれた神田さん。周囲が「ぱ~」っと明るくなる、華やぎオーラのある方でした。サバサバしていらっしゃるのに、物腰柔らか。どんなことも柔軟に対応していく能力と、何とかクリアしてしまう“ガッツ”を持ち合わせた女性…という印象です。また神田さんには娘さんが二人。何と! お二人とも介護職を目指して現在勉強中だそうです。まさに、母の背中を見て育つですね。今後が楽しみです。また、大自然に囲まれた『常楽園』は、天井が高く、広々としたゆとりのある空間。木をふんだんに取り入れたログハウスのような雰囲気で、入居者さんもリラックスしながら思い思いの時を過ごされているご様子でした。置戸町の訪問介護事業所は、ここのみということで、オンリーワンであるからこそ、今後どんなふうに展開していくのか気になるところです。ますますのご発展を心よりお祈り申し上げます。
今回、取材にご協力いただいた神田理沙さんをはじめ、『常楽園』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同