中学の職場体験を機に介護の道へ
悔しい気持ちが介護を勉強したいと強く思ったきっかけでした。
ホームヘルプサービスは、畑道を抜けた緑豊かな小高い場所にある。
―介護の道に進もうと思われたきっかけは?
もう15年も前、当時施設に入所していた私の曽祖母を親と一緒に面会に訪れたことがあって。その時、子供心に「ここはどんな所なのだろう?」と興味が湧いたんですよね。その後、中学2年の『職場体験』では、その時の記憶もあってか、気になっていた施設でのお仕事を選んで…。そこからはずっと介護一直線という感じでしょうか。
正面口には、タイルで一面作られたクローバーアートが。
―職場体験というのは?
高校進学するうえで進路の目安にと学校が実施していたものです。職場に伺ってそのお仕事を体験するのですが、選べる職業は基本この地域にあるものがメイン。卒業後、この地域で働いてほしいという想いも込められていたんですかね。スーパーの棚卸、ガソリンスタンドなど、色々なお仕事から選ぶことができました。
玄関脇に置かれた手作りふくろう。湿度&温度計も。
―それで伊東さんは施設のお仕事体験を選ばれたのですね。そこではどんな経験を?
体験場所が、私が今働いている「養護老人ホームこはぎ荘」だったんです。この建物が建設されてまだ1年ぐらいの時でした。当時はケアされているスタッフのことを“寮母さん”と言う時代で、お年寄りに明るく声かけする姿がとても印象的でしたね。ちょうど夏祭りの時期で、お年寄りの方と一緒に七夕飾りを作ったり、会話をしたり…。
伊東さんが担当するご利用者さんは9割が施設に入所されている方。外出訪問は少ないそう。
―なかでも印象的な出来事とかありましたか?
入所されている方のなかに耳の不自由なおばあちゃんがいらして。手話で話をされるのですが、私は全く手話の内容が理解できず、コミュニケーションがとれなかったんです。それがすごく悔しくて。何を伝えたかったのかな?ってその後も気になって仕方なかったです。その悔しい気持ちが、介護を勉強したいと思った大きなきっかけだったんだと思います。
目立つ場所に貼られた、ボケない音頭。三番まであります。
―なるほど。それで高校は介護系に進まれたのですか?
はい。一関市内に福祉学科のある高校があったのでそこへ進学し、3年間みっちり勉強と実習を。そこでヘルパーの資格も取得しました。
―介護を勉強するなかで、不安や戸惑いなどは?
やっぱり気持ちの波はありましたよ(苦笑)。実習で伺った施設のちょっとピリピリした雰囲気とか、思った以上に手がかかったり、どうコミュニケーションを取ったらいいのかわからなかったり、何気ない自分の一言で利用者さんが不機嫌になったり、憧れとはかけ離れたギャップを感じて「なんか違うかも…」と落ち込んだ時期もありました。でも介護に対する気持ちは不思議と消えなかったです。