特養から訪問へ
ちゃんとできない自分にもどかしさを感じていました。
ゆうらいふ正面のグリーンは来る人の目にも優しい。
―佐藤さんが介護のお仕事に就かれたきっかけは?
介護職の前は電子部品の製造会社に勤めていました。業績の波に左右されることも多く、心穏やかでない日々のなかで、長期的にみてもっと安定した職業に転職を・・・と考えていたときに、ヘルパー2級養成講座のパンフレットが目にとまり、何気なく受講したのがそもそものきっかけです。当時10年前というと介護に対する需要が高まってきている頃でしたので、将来性がある業界という意味でも惹かれたんだと思います。
スタッフTシャツには「がんばろう宮城」の文字。ほかにもピンクや緑などの色違いあり。
―実際講座を受けられて、仕事にしてみたいと思われたのですね?
そうですね。長く働けそう、とか安定した生活を、というのももちろんありましたが、ご利用者さんと身近に触れ合っていくなかで「ありがとう」と言われた一言が印象的で。すごく心に響くものがあったんですよね。
厨房を兼ねた喫茶があり、ご利用者さんの憩いの場にも。
―それで資格取得後、ここ『ゆうらいふ』に?
はい。特養で働くことを希望していたので、調度こちらで特養が新設されるという募集を見つけすぐに応募したんです。80名ぐらいの応募者がいて、かなりの倍率だったんですよ。今は当時ほどの応募者がいないのが残念なところですが。
デイサービスの入り口には手作りの装飾が。
―佐藤さんが特養を希望されたのはなぜですか?
在宅でご利用者さんと1対1で関わることに対しての不安だったり、デイサービスでそれぞれのご利用者さんに楽しんでいただくにしてもそれなりの技量が必要だと研修で実感していたので、今の自分には特養が一番働きやすいかなと思ったからですね。
ランチ中のスタッフ。会話も弾み、とても和気あいあい、楽しそう。
―なるほど。実際、特養で働かれてみてどうでしたか?
最初は右も左も分からず、上司に厳しく指導される日々でした。正直こたえましたね。でも上司に言われていることが決して間違いではないことも分かっていたので、どちらかというと、ちゃんと出来ない自分にもどかしさを感じていたんだと思います。あとは1つのことに集中してしまいがちで、周囲が見渡せていなかったのもあるのかな。そうしたことは経験を積むなかで解消されていきましたし、少しずつ上司の指導内容も変わってきて「あぁ、自分の存在を認めてもらえたのかな」と思えるようになってからは、だいぶ気持ちも楽になりました。
―最初の1年で心の葛藤があったわけですね。そこから訪問へ異動されたんですよね。特養での仕事に調度慣れてきた頃だったのでは?
そうなんですよね。なぜ今?とは思いました。でも今考えると、逆に早い段階で訪問を経験できて良かったと思います。施設だと物品も揃っているし、何かあればすぐ相談できるスタッフが側にいるのですが、在宅だと自宅にあるもので代用したり、そのときケアにあたるスタッフの判断にゆだねられますから。
―つまりその方の力量が測られるわけですね。
そういうことになりますね。施設にいる期間が長ければ長いほど、訪問に移った後の自分がもっと大変になっていたと思います。そういう意味では、その場の判断力や対応力を磨ける環境に早い段階で身を置けたことは感謝ですね。施設で通用したことが訪問で通用しない場面も多く、やはり介護サービスの基本は在宅にあるのかなというのはこの数年で感じることでもあります。