介護のお仕事を選ぶきっかけ
専門学校での実習で見たご利用者さんと職員のやり取りに感動して「私も!」と思いました。
すえながの玄関口。車椅子でのお散歩から帰ってきたご利用者さんと職員さん。
―小笠原さんがこのお仕事に就くきっかけは?
両親が共働きだったため、幼い頃、私の面倒を見てくれていたのが近くに住む祖父母でした。学生時代には下宿させてもらったり、祖父母に触れ合う機会も多かったので、自然とおじいちゃん、おばあちゃん子に…。そういう環境もあって、小学校の時には漠然と福祉関係で働けたらいいなと思うようになりました。でも特に「これっ」と思えるものがあったわけではないんですよ。ただ漠然と誰かの役に立てればいいなとか、私が何かすることで誰かが幸せになればいいな、と思う程度で。
玄関ホールでは、来客の方やご利用者さんと職員の方々が談笑する姿も。
―ということは、小学生の時に何気なく抱いていた夢が『介護の仕事』を通して今実現している感じですか?
そうですね。でも最初から介護の方面に行くと決めていたわけではありません。母親が保育の仕事をしていたので、そちらにも興味があって。そこで高校卒業後の進路は、保育の勉強をしつつ、保育士の資格がとれて、さらに1年間で介護福祉士の資格もとれる学校に進むことにしました。
―その学校では、保育の勉強をしながら介護についても学べたわけですよね? 実際勉強されてみて、介護の方に進みたいと?
最初はどちらが…というのは特になかったのですが、保育科の時に行った老人ホームでの実習が、私にとっては衝撃的で、介護に進むことを決断させてくれました。ご利用者さんと職員さんがやり取りする雰囲気やお世話する様子にやりがいが感じられて「私も!」と思えたんですよね。
病院から久しぶりに戻られたというご利用者さんを笑顔で迎える小笠原さん。
―『衝撃的』と感じられたのはどんな点で?
私が間近で見ていたおじいちゃん、おばあちゃんは、一人で歩いて外にも行ける元気で健康な姿。一方で、そこににいらした高齢者の方は、一人で動けない、会話もままならない方ばかり。自分が今まで知らない高齢者の姿があることに衝撃を受けたんです。そんななか、一生懸命に話しかけ、応える職員さんの姿を見て『すごいなあ』と感動して。本当にいい方たちばかりだったので、そこにも惚れたんでしょうね。
―それで『介護の道』を決断されたのですね。それでまずは資格を?
はい。同等の試験を受ければ資格がとれる時代だったので、保育の専門学校を卒業後、介護福祉士を1年で取得し、病院(老人病院)で働き始めました。
施設内の壁には、四季折々で変わる紙の模様が散りばめられている。
―そこではどんなお仕事を?
老人ホームや特養のような環境と似ていて、おむつ交換や入浴介助、食事介助など、身の回りのお世話をひと通り。寝たきりの方が多く、自分で歩ける方はごく一部だったので、そこで介護技術を学ばせてもらった感じです。
施設内のお風呂はレトロな雰囲気。
―いざ現場に出てみてどうでしたか?
やはり実習時の時とは違いますよね。実際の現場はとても厳しかったです。歳の離れた年配の先輩方が多い職場だったこともあり『見て覚えなさい!』という感じで、精神的にもかなり鍛えられました。
―病院では4年ほど働かれていたそうですが、徐々に介護技術も身につくなかで苦労した点などありますか?
当時、療養型に切り替わる頃の時代は、まだまだ医療面でのケアが強く、介護に関しての書式も存在しないなかでのケアで、私達がやれることもすごく限られていました。そんななか、療養型に切り替わるから介護にもっと力を入れていきましょう、と婦長が話されて。患者さん1人ずつのアセスメントを作成することになったんですよ。その作業は大変ながらもすごくやりがいがありましたね。『体のこういう部分がこんな状況で…こういう所に注意しましょう』と細かくシートに記入して。そんな風にみんなで力を合わせながら介護面での充実を図っていけたのは、とても印象深い思い出です。