『介護支援サービス“どんぐり”』で実現していきたいこと
地域の方がオープンに参加できて、介護情報を得られる勉強会を開催していきたいです。
田口さんが入社直後に始めたというご利用者さんの情報メモ。ケア訪問したヘルパーさん達から聞いた情報をPCに打ち込み、印刷してノートに張り付けたもの。さらにそこへ、気になる点を追記。
―田口さんが老人ホームから在宅に移られたのはなぜですか?
色々なご利用者さんのご家族とよく会話をするようになったことをきっかけに、まだご自宅で元気だった時の話などを聞きながら、自然と在宅に興味が沸いてきたんです。また今後のことも考えて色々経験しておきたいなという気持ちもあって、在宅に行くことを決めました。
出勤簿。と同時にケアへ出かけた時間、戻って来た時間も明記する。
―それで、こちらの介護支援サービス“どんぐり”に転職されたわけですね!?まだ移られて半年ほどですが、初めての在宅、どうですか?
実は最初の数か月、全然現場に出れず、ずっと事務仕事をしていました(苦笑)。というのも、同性介助が基本だったので、男である自分の出番がほとんどなかったんですよ。
田口さん自作のどんぐり新聞。地域の行事や関節炎の予防体操、など記事内容は様々。
―男性のご利用者さんもいるのでは?
もちろん男性の方もいますが、女性のご利用者さんの方が多いです。最初は事務所で、ひたすらPCと向き合い事務作業。シフト表の書式を作ったり、新聞を作ってみたり。
事業所内片隅にはお客様用コーナーも。
―新聞!?
はい。自分がご利用者さんの所へ行くことができない分、その方にお手紙を書くぐらいの気持ちではじめたものなのですが、「インフルエンザや熱中症に気を付けてください」といった季節の情報に加えて、クロスワード、おすすめの本とか色々です(笑)。
オシャレは足元から! スタッフが履くスリッパは十人十色。
―それは内容盛りだくさんですね。その後、サ責、管理者になられて、今では田口さんも現場に出られているんですよね?
はい。今となってはその現場に出なかった数か月があってよかったと思っています。その間、ケアから帰宅したヘルパーさんから聞いたご利用者さんの様子を細かく記録していたので、現場に出る際、そうした前情報があることでケアがしやすいというのもありました。また、自分自身、アセスメント、情報収集にはすごくこだわっているんですよ。
田口さんが作成したシフト表。スタッフの空き具合も一目瞭然。
―というと?
施設にいた立場からすると、ご利用者さんとかつて関わっていたヘルパーさんから入る情報ってすごく重要なんです。出来る限り知りたい。例えば、ヘルパーさんが寄せ書きした色紙が施設内に飾られていたりするのですが、そこからも色々な情報が得られます。そこに「よく歩かれていましたね。でも右目が見えずらいから電信柱によくぶつかってて…」みたいなことが書かれていて、今は全然歩けないけれど、昔はすごく歩けていたんだな、とか。両目が見えていないとばかり思っていたけれど、もしかして、左はまだ見えているのかな?といった職員同士の話題にも繋がったりしました。こうした大事な情報を自分が今取り扱っているのだと思うと、ヘルパーの専門性って、アセスメント能力でもあるな、と感じたりもします。こういうことも、勉強会を通してヘルパーさん達と共有していきたいですね。
―なるほど。ささいな情報もご利用者さんをケアするうえで大事な要素になってくるんですね。では今後、田口さんが目指していきたいことや取り組みたいことなどを教えてください。
まずは、在宅って移動時間が多いのがすごくネックだな、と思っています。言い方が悪いかもしれないですが、施設はご利用者さんが限られた範囲の中にいるため、頻繁に訪問することができます。表現が良くないですが、効率性が重視されているように思うこともあります。一方、在宅は車で20分以上かけて入浴介助に行く。15分かけて排泄介助1回など、施設と在宅は、時間のかけ方が両極端だと感じることもしばしばです。そこで、もう少し良い方法がないものか、とずっと模索しているのですが…。
施設、在宅どちらにも矛盾は色々あるわけで、だからこそ、勉強のし甲斐があるのですが、結果、色々突き詰めていくと、やっぱり家族介護にまさるものはないな、とも思いますね。だからこそ今後は、家族がもっと介護を継続できるような支援をしていく必要があると考えています。
―例えばどんな?
例えば、事業所で行う勉強会もヘルパー向けが多いですが、そこに地域の方も参加できるといいな、と思います。市民の方がオープンに参加できる場を、そして介護情報をシェアする機会をもっと設けていくべきだと思います。老人ホームの社内研修に一般市民も参加できる、とかね。みんなの駆け込み寺のような、地域に求められる事業所が本来あるべき姿だと思うので、今後はそうした活動にも力を入れていきたいです。
編集後記
学生時代に始めたバイトの一つが、かけがえのないライフワークとなった田口さん。老人ホームでのバイト時に体験した「介護のここが面白い!」のエピソードでは、なるほど、こういう見方もあるのか、ととても新鮮な気持ちにさせられました。どこにやりがいや面白さを見出すかは、人それぞれ。だからこそ何でもトライしてみる姿勢が大事なのだと実感します。田口さんの今までを伺うと、興味が沸いたことはとことん突き詰め、「これ!」と決めたことは果敢に取り組んできた方なのでしょう。『若さとは行動力』を地でいく田口さん。これから介護という枠のなかで、何か新たな取り組みをしてくれそう!そんな気配がするので今後に要注目です!
今回、取材にご協力いただいた田口誠さんをはじめ、『介護支援サービス“どんぐり”』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同