知りたい!介護サービス 堀口直孝
サービスを受ける人も提供する人も、『気持ちよく』が合言葉
「知りたい!介護サービス」では、経営コンサルタント
でもある堀口先生が、介護サービスとの上手な
付き合い方をご紹介いたします。
介護コラム
第15回 訪問介護における実地指導への対応ポイント(2)
介護保険の指定事業所への実地指導への対応ポイントをご紹介する前に、サービス提供責任者などが、特に“心に留め置くこと”を、いくつか挙げてみます。
☞ 利用者が満足するサービスの提供だけをもって、居宅サービス費を算定するための必要十分条件とはならないこと。
実地指導は、指定事業所として備え付けが義務化されている書類や記録を基に、指導職員と対話方式(ヒアリング)で行われます。ヒアリングは、法令遵守状況を検証するために、書類内容や記録内容の補足をしたり、日常業務などについて、対話を通して状況確認を行ったりします。
【注意ポイント】
実地指導職員とのヒアリング現場で、ヒアリング対応している管理者やサービス提供責任者が、“提供されたサービスについて利用者が満足していたこと、喜んでいたこと”をことさら誇張し、時間をかけて説明する光景がしばしば見かけられます。利用者に満足されるサービスを提供することは、指定事業所として心がけなければならない大切なことですが、その前提には、当該サービスそのものが、対象利用者に保険提供されることが、指定基準や報酬算定基準などに照らし合わせ、適正であることが条件となります。そのため、指導職員は適正である旨を順守すべき法令内容に沿った説明を求めているのであり、利用者が喜んでいたか、などの的外れな話は、効率良く点検・指導を行おうとしている指導職員をヤキモキさせるだけかもしれません。
☞ ケアマネのケアプランは、訪問介護費算定を保障したものではないこと。
訪問介護費を算定できるのは、指定訪問介護に関する指定基準と報酬算定基準を満たしている場合です。
【注意ポイント】
指定基準(うち運営基準)において、居宅サービス計画が作成されている場合は、当該計画に沿った指定訪問介護が行われることとなっています。しかし、この規定の前提は、居宅サービス計画内容が適正なものであることが条件となります。
訪問介護事業者は、介護計画作成にあたって、自らがアセスメントとマネジメントを実施すること。そして、サービス提供開始後についてもモニタリングを行うなどし、常にサービスについて評価することが義務づけられています(サービス提供責任者の責務として位置付けられています)。また、アセスメントなどを実施するなかで、ケアマネが把握しきれなかった課題や、介護目標、サービス内容などの見直しが必要となるような心身状況の変化が確認された場合は、これら利用者に係る情報はケアマネに提供し、必要に応じてサービス担当者会議の開催やプランの見直しについて提案を行うなど、ケアマネ(居宅介護支援事業者)との密接な連携に努めるよう求められています。
したがって、ケアマネが作成したプラン内容が、利用者の心身状況とマッチングしていない、例えば、ケアプランに位置付けられたサービス内容自体が相応しくないなど、ケアプランが不適切であるとわかりながらも、居宅介護支援事業者と必要な連携を図らずに実施した訪問介護は、例えケアプランに沿ってサービス提供されていたとしても、適切な訪問介護が提供されたものとはみなされず、実地指導で指摘を受けることになるかもしれません。
訪問介護事業者も適切なアセスメントとマネジメントにより、自ら的確な判断を行い、居宅介護支援事業者と連携し、適切な介護計画内容で適正な介護報酬算定ができるようになることが大事です。
☞ 指導監査も法令遵守:行政も事業者同様に法令に基づいた対応であること。
介護サービス事業者に法令遵守を求め、指導を実施しているので、指導をする側の行政も法令に基づいた対応が求められることになります。厚生労働省では、指導監督業務の標準化を図るべく、指導監督にかかる専門的な知識修得などを目的とした(介護保険指導監督中堅職員)研修を行っているようですが、実地指導が行われる現場では、まだまだ保険者間、あるいは指導職員間でバラつきがあるように思えます。
【注意ポイント】
時には、「指導」と「監査」の区分の趣旨が適切に理解されていなのかとも思えるような指導職員の言動があったり、指定基準や報酬算定基準についても、法令を一語一句どう読み直しても到底読みとることのできない勝手な解釈を押しつけてくるなどの、法令根拠のない、納得できない指摘が皆無でないのも事実です。そうした法令根拠のない納得できない指導(指摘事例)については、諦めて妥協するのではなく、毅然とした対応で納得できるまで確認することが大切です。
『次回は、実地指導における具体的な検証ポイントをご紹介します』
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バックナンバー
- 【第14回】 訪問介護における実地指導への対応ポイント(1)
- 【第13回】 生活援助の新時間区分への適切な対応を!
- 【第12回】 平成24年度介護報酬改定等に伴う重要事項説明書の変更内容を明示した書類作成・説明・同意・交付について!(訪問介護)
- 【第11回】 生活援助・介護予防の報酬改定により3~4%の減少か!?改定以降の訪問介護事業収入をシミュレーション。
- 【第10回】 介護予防訪問介護のキャンセル料をとっている? とっていない?皆さんの事業所はどちらですか!?
- 【第9回】 新規加算報酬は当該加算事例があっただけではとれません! 必要な記録がしっかりと整備されていますか?! ~(1)「緊急時訪問介護加算」について~
- 【第8回】 平成21年度介護報酬改定等に伴う 契約書等における重要事項説明内容の変更について!
- 【第7回】 平成21年度介護報酬改定(訪問介護)により介護従事者の処遇や事業経営の改善は図れるのか?!
- 【第6回】 これって物損事故?
- 【第5回】 指導監督業務の指導内容にバラツキが?!
- 【第4回】 保険外サービスを取り扱うときに (2)~“自費サービス”についての理解 ~
- 【第3回】 保険外サービスを取り扱うときに(1) ~ 整備が必要とされるもの ~
- 【第2回】 求めるサービスに対する期待値のズレ(2)
- 【第1回】 求めるサービスに対する期待値のズレ(1)
堀口 直孝
シルバーケア・サービス豊住 顧問
経営コンサルタント
プロフィール
看護婦家政婦紹介所の上部団体である(社)日本臨床看護家政協会の管理者として家政婦の職場確保を支援するための事業の開発推進にあたる。
平成6年 健康保険法の改正により病院の付き添い介護が廃止されたため、家政婦たちの職場を在宅へシフトするためのモデル事業の実施会社を同協会内に設立。
同社において在宅介護サービスを立ち上げ、東京都11区よりホームヘルプ事業を受託、介護保険制度施行後、指定事業者として管理、運営を行う。
平成14年 (株)ふれんどりーホームサービスを設立し、東京都千代田区を中心に訪問介護、居宅介護支援事業を実施するかたわら、同事業のコンサルタントも行う。平成30年より現職。