介護従事者の処遇改善のための緊急特別対策である今回の介護報酬改定は、その目的を達成すべく一助となるような内容であったのでしょうか。
今回の報酬改定の特徴は、加算が中心であると言えます。その中で新規に設けられた「初回加算(200単位/月)」、「緊急時訪問介護加算(100単位/回)」は、まだ解釈通知など出ていないのでどの程度取扱いが発生するか不明瞭ではありますが、日々の訪問介護事業の運営状況や、緊急時訪問介護のように適正サービスとの整合性という点で取扱いに制限が予測されることなどを考慮すると、売上収入としてあまり期待はできないと思われるので、売上予測を立てるときにそれほど考える必要はないでしょう。
今回の改定において売上アップが期待できるのが、短時間サービス(身体介護30分未満・生活援助30分以上1時間未満)の評価による報酬見直し部分と、その他の地区を除いた地域区分による報酬単価の見直し部分となります。厚生労働省の介護給付費実績データに基づいて全国訪問介護事業所の平均的な売上収入の伸びを掲載いたしました。
経営実態調査結果でもご存知のように、訪問介護事業者は、人件費をも含めた経費の削減を重ね重ねて何とか事業運営を行っている現状、今回の売上収入の伸びでもって、本当に介護従事者の処遇改善が可能なのでしょうか。
◆ 今回評価したサービス
現 行 | 改定後 | 引上げ分 | |
身体介護(30分未満) | 231単位/回 | 254単位/回 | 23単位…A |
生活援助(30分以上1時間未満) | 208単位/回 | 229単位/回 | 21単位…B |
◆ 厚生労働省の介護給付費実態調査月報/平成20年9月実績データ
◎ 請求事業所数/ 25,270事業所 |
※ 報酬見直しによる収入の予測伸び率:(A×D+B×E)÷C≒3.8%
現 行 | 見直し後 | 伸 び 率 | |
特 別 区 | 10.72円 | 11.05円 | 3.08% |
特 甲 地 | 10.60円 | 10.70円 | 0.94% |
甲 地 | 10.36円 | 10.42円 | 0.58% |
乙 地 | 10.18円 | 10.35円 | 1.67% |
そ の 他 | 10.00円 | 10.00円 | 0.00% |
※ 平均的な事業所の訪問介護費収入の予測伸び率 : 3.8% + 地域区分別伸び率