ご利用者さんとの関係性。サ責として、そしてこれから。
他人の価値観に対応できる器を作っていきたいな、と思います。
会報誌や新聞の作成も青木さんのお仕事の一つ。事業報告やイベント情報など記事内容は盛り沢山。
青い鳥が描かれた車は、福祉有償運送車両。
―青木さんがサ責になられたのは昨年の10月ということですが、介護職に就いたばかりで、すぐにサ責になられたことについて、心境的にはどんな感じですか?
実はサ責としては、前任者から今も引き継ぎをしている状況です。特に事務作業は分からないことも多くて、苦労しています。1日に訪問が数件入ると、事務所に戻ってきた時には頭がボーっとしてしまい、なかなか事務作業に頭を切り替えられなくて。家事支援って、身体介護より大変なんだな、というのもやってみて感じたことです。
青木さんがいる事務所内の様子。奥には副代表の奥田さん。
真ん中の事務所には副代表の佐久間さん。奥には有償サービスを担当するスタッフが。
―というと?
身体介護って、これをやったら終わりというのが割とはっきりしているんですよ。でも家事支援は、お風呂を洗ったり、掃除機をかけたり、その方によって作法が違うので、作業中、神経をすごく使うんです。利用者さんから見られているし。だから疲労感もそれなりに…。でも、この間すごく嬉しかったことがありました!
青木さんが管理担当という「ふれあいガーデン」。今、冬の時季は小松菜や水菜が育っている。
夏の「ふれあいガーデン」の様子。色とりどりの花が咲いている。
―訪問中での出来事ですか?
はい。気難しいご利用者さんで、最初は訪問中も「あなた誰?」みたいな感じで私のことを覗いてくる方がいらして。でも何回か訪問を繰り返し、徐々に心を開いてくださり、年明け、訪問しに行ったら「あー!」ってその方がハグしに来てくださったんです。もう本当に嬉しくて! やっぱり、なかなか自分を受け入れてもらえない、拒否されるご利用者さんに出会うと、訪問するのが嫌になるじゃないですか。でもその気持ちって必ず相手に伝わるんですよね。それではいい介護ができない、というのは分かっているので、自分から心を開いていこう、と努力はしていました。同じ人間じゃないから、100%は理解し合えないけれど、『相手を理解したい、寄り添いたい』というメッセージは送り続けよう、と。それがハグの瞬間“繋がったな”と思えて、感動しました。そうした小さい積み重ねで、ご利用者さんが変化していくのを感じるのも、この仕事の楽しみかもしれません。
こちらも夏の風景。ひまわりが青空に向かってスクスク。
―先程の『寄り添う』というのもそうですけれど、青木さんがご利用者さんと距離を縮めるために心がけていることって他に何かありますか?
そうですね。いかにその方の本音を引き出せるか、そのための環境づくりには気を配っています。よくご利用者さんが「話をしたいの」と言うんです。寂しいんだろうな、と思うんですよ。親子だと遠慮するような話も、ヘルパーだと関係ない他人だから、つい本音で喋れるということもあるじゃないですか。本音が聞ければ、より良いサービスにもつながるので、そこは意識しています。あと、最近参加した研修で「福祉は他人の価値観で仕事をさせていただく。それでお金をいただいている」という言葉がありました。納得です。こちらの価値観を押し付けないよう、価値観の多様性に対応できる器を作っていきたいな、と思っています。
夏には、きゅうりやピーマンが収穫できたそう。
―なるほど。では最後に、今後の展望を教えてください。
まずは、最近入社したばかりの新人指導をしっかりと。私も新人なので「どうしよう~」とは思うのですが(苦笑)、一緒に勉強していくという気持ちで、共に成長していけたらなと思います。色々心の内に溜め込むのが一番よくないので、相談しやすい環境を作ってあげたいな、と。あとは介護の土台でもある“心”を育てていきたいですよね。これがあればどこでも通用すると思うので。また、サ責業務をしっかり覚えてこなすことです。地域を知るには、今の訪問介護のサ責はいいポジションだと思います。一ヘルパーよりも広い視野で見られますし、責任感という意味で、ご利用者さんを支えたい気持ちがより強くなりました。そしていつかは、大学時代に夢見た、孤立化した人たちの発掘と支援ができればいいですね。介護保険制度が改正に伴い、「生活支援コーディネーター」という位置づけもあるので、そこに向けて、今は一歩ずつ色々なことに取り組んでいけたら、と思っています。
編集後記
お話を伺えば、わずか数年の間に辛い経験を多くされているとのこと。でもそんなことを感じさせないほどに明るくて、温かい雰囲気をたたえた方でした。“辛い経験が人を強くもする”という言葉があるように、それを力に変え、「人の役に立ちたい」という真っ直ぐな気持ちのまま前を向いて進む青木さんの姿に学ぶことも多かったです。また、初対面でも全く壁を感じさせずとてもフレンドリー。話せば話すほど、青木さんの魅力に引き込まれて、「お友達になったら楽しそうだな」と思ってしまいました。きっとご利用者さんの心にもスッと寄り添っているのでしょうね。
今回、取材にご協力いただいた青木里美さんをはじめ、『たすけあいの会 ふれあいネットまつど』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同