サービス提供責任者としてヘルパーに伝えていきたいこと
自分で考えることの大切さを知ってほしい。
ご利用者さんそれぞれの注意事項や申し送りがメモ書きで貼ってあります。
―代田さんは社会福祉協議会で13年働いたのち、いくつかの事業所を経て、健和会ヘルパーステーションにいらしたとお聞きしましたが・・・。
はい、気付けば介護業界に17年もいますね。訪問に限らず、デイサービス、前職では5年間ケアマネージャーを。この業界って、経験を積んで社会的ポジションが上がるにつれ現場業務からは離れていく人が多いんです。でも私はずっと現場にこだわって働いてきました。だから「介護ってこうなんじゃないかな」という自分なりのポリシーもあるわけです。そんな私がここ健和会ヘルパーステーションに来てまず驚いたのが、考え方の違い。特に職員の指導方法には強いショックを覚えました。
計画書作成などでデスクに向かっているときが一番仕事っぽいですね、と代田さん。
―考え方の違い・・・とはどういった点で?
今まで『地域で暮らす人の生活を支える』という視点でケアをしてきました。これが福祉を母体としたヘルパーステーションの考え方だとすれば、健和会は医療を母体としたヘルパーステーション。こういう時はこうして、こういう時はこうする・・・と決められた対応も多く、ヘルパー自ら考えて行動せずとも医療がサポートしてくれます。これは福祉にはない強みでもあります。でも実際の現場では、日々体調や精神状態が変化するご利用者さんそれぞれに合わせたケアが要求される。状態にあわせたケアができてこそ"介護"だと私は思っているので、その違いに違和感を感じたんですね。でも逆にいえば、医学的知識を兼ね備えたヘルパーが状況を見極め、医療につなげる、そうした医療と福祉の連携がとれる環境が健和会には整っているわけで・・・。それを活かさない手はないんじゃないか、とも思いました。
ヘルパーさんは車で訪問することがほとんど。今日もほとんどの車が出動中。
―そうした違いを感じて、代田さんは実際に何か行動にうつされたりしたんですか?
私は来た当初から職員に「状況にあったケアができるようあなた達のレベルをあげてほしい、そのための努力を惜しまず、また何より常に"考えて"」と言い続けています。おそらく最初は「変なことを言う人が来たー!」という感じだったでしょう。でも私が介護技術を1つ教えるよりも、その人たちが自分で考えて学んでいくことの大切さを知ってもらう方がはるかに大事。介護業界でなぜ人が育たないの? と問われれば、それはおそらく『教える』『教わる』だけに留まっているから。『自分で考える』ことをせず、教わることを受身で待っている人が多いからだと思いますよ。
カメラを向けたら、飛びっきりの笑顔で応えてくれた介護部長。
―なるほど。であれば、何か分からないことがあって質問に来たヘルパーさんがいたとすれば、その人に対しても自分で考えて・・・と?
そうですね。アドバイスはするかもしれませんが、結論を出すのはその本人であるべき。分からなければ、調べるなり、本を読むなり、情報収集の仕方も自分で考えてほしい。人に聞いてしまったら、その答えが全てになってしまうじゃないですか。もしかしたら私の答えが間違っているかもしれないし、それ以外の答えだってあるかもしれない・・・。自分で考えることで広がるかもしれないその人たちの可能性を狭めたくないな、と思います。
― 一見厳しい言葉のようですが、その人自身のためでもあるわけですね。そう言い続けることで、周囲に変化は生まれましたか? 実際、多くの人が最初の一歩を踏み出すことに臆病であったり、戸惑いがあるなかで、そんな簡単には変われないと思うのですが・・・。
だからちょっとずつですよ。それに案外本人は気付かなくても、他人には変わったなと思えることもあるじゃないですか。それに気付いたら相手に「良かったね」って伝えます。ここはすごく良くなったから、今度はここをもう少し変えてみたら?って。以前、ある職員が病気になってお休みをもらうことに「すみません」と電話をしてきたことがありました。でも私は、「病気になることを悪いなんて思わず、その病気のことなら何でも私に聞いて! と言えるほどに病気を調べつくしてから戻ってくるのよ」って言ったんです。皆さんがダメだと思うことも発想の転換次第ではプラスに変わる。物は考えよう、マイナスをおそれず、まずは自分で考えて行動してみようよ! って。それを伝えていくことが私の使命であり、ご利用者さんから教わったことでもあるのかな、って思います。