介護の仕事に就いてみて
生活全体を見つつ、調理や家事を並行して進めるのは大変でした。
母体である野島病院。訪問介護ステーションのじまは数軒先の同じ並びにある。
―米田さんがヘルパーのお仕事に就かれたのはどんなきっかけでしたか?
米田-子育てが一段落したので、何か仕事を始めようと職安へ。その時にヘルパー2級の資格が取れる、と書かれたポスターを見て、応募してみようかな、と思ったことがきっかけです。その時はヘルパーがどういう仕事かも分からずに。でもまずは“手に職”かな、と思いまして。
―で実際、その講習に参加されて、ヘルパーのお仕事に触れてみてどうでした?
米田-ずっと入院していた父がいて、その時私は何もしてあげられなかったけれど、もっと早くこの仕事の勉強をしていれば、何か出来たのかな、と色々考えさせられました。あとは、実習で施設やデイサービス、在宅それぞれに行く機会がありましたが、仕事をするなら在宅がいいな、と。
一般の方の住居を野島病院が買い取り、事務所として使用しているため、見た目は普通の一軒家。内装に少しだけ手を加えている。
―それはなぜですか?
米田-自分の性格的に、1対1でご利用者さんとじっくり向き合う方が合っていると感じたからです。デイのように、大勢の前で弾けるような明るさをもてるタイプでもないですし、施設は流れ作業的な印象を受けたので。
―なるほど。それで資格を取られた後、すぐヘルパーに?
米田-はい。取得後にすぐ職安へ行き、『訪問介護ステーションのじま』の求人を見て応募。採用いただいてから、もうかれこれ10年です。
玄関口は広く、手すりが取り付けられている。
―10年ですか。長くここで働かれているのですね。横山さんはどんなきっかけでヘルパーに?
横山-そもそもは、同居していた祖母の介護に関わるようになったのがきっかけです。ちょうど私が前職を辞めた頃、進行性核上性麻痺という病気を患った祖母の状態が悪化し始めていて。体が動かしづらかったり、胃ろうの造設、たんの吸引も必要で。祖父がずっとメインで介護をしていたものの、私も仕事を辞めたことで手が空いたので、手伝うようになったんです。
―介護は、最初は見よう見まねで?
横山-そうですね。最初は祖父や母の介護する姿を観察して真似てみたり、あとはここ『訪問介護ステーションのじま』のヘルパーさんに来ていただいていたので、分からないことは相談しつつ、自分なりに勉強したり…。
「訪問介護ステーションのじま」は、階段を上がった2階にある。
―実際介護に関わるようになってどんな印象を受けました?
横山-よく世間では「介護は大変」と言うけれど、私の場合は、そうした先入観もなしに介護と向き合う現状が目の前にあったので、特に「大変」「辛い」と思うことはなかったです。私一人で介護をしていたら、そう思ったかもしれないですけれどね。
―介護する日々から、どうしてそれを仕事にしようと思われたのですか?
横山-介護に関わるようになって1年ぐらい経ってからでしょうか。もっと介護について知りたい、勉強したいと思うようになっていました。そんな時に、所長に「うちでヘルパーをやらない?」とお声をかけていただいて。その声に後押しされながら、資格を取り、そのままここで働かせてもらっている、という経緯です。何より『訪問介護ステーションのじま』で働くヘルパーさんの仕事ぶりは、間近で日々拝見しながらとても頼もしく、そこの信頼感は絶対的でしたから。
事務所は2階の奥の部屋。元は二部屋で、壁を壊して一部屋につなげたそう。
―お二人それぞれヘルパーになられた経緯は違うのですね。では、実際働かれてみてどうでしたか?
米田-働き始めた当初は、泣いてばかりでしたね(苦笑)。ご利用者さんにきついことを言われたり、先輩に叱られたり。でもたまにご利用者さんから言われる「待っとったよー」「ありがとう」という言葉が何よりの励みで…。あとは、厳しくも優しい先輩に相談にのっていただきながら、何とか乗り越えられた感じでしょうか。
横山-私は、身体介護は祖母の介護で何となくこんな感じかな、と理解していたのですが、家事援助は全く触れたことがなくて。最初、掃除や調理が全くできず大変でした。先輩のヘルパーさんに何度も付き添ってもらいなが、トイレ掃除一つにしてもイチから教わる感じで。同時に、生活全体をも見ていかなければいけないので、そこと並行しての調理や家事は、本当に慣れるまで苦労しましたよ。
事務所内。みんな黙々と作業中。中央に所長、手前のデスクに米田さん、その斜め向かいが横山さん。
―家事は自己流でもいいのかな、という印象がありますが、トイレ掃除にもやり方があるのですか?
米田-はい。やはり色々な職員が働くなかで、ご利用者さん側から見た時に、「このヘルパーさんはいいけれど、このヘルパーさんの掃除の仕方はちょっと…」といったような、個人間での差が出ては困ります。だからといって過剰なサービスもできないですし。制度に沿って、ある一定のレベルを職員全員がクリアするために、掃除一つにしても、きちんとマニュアルがあるんですよ。
横山-だから普通に家事をすればいい、というわけではなくて、「この人じゃないとダメ」と思われないよう、後のヘルパーに繋げることも考えて、それぞれが一人前にならないといけないんですよね。