営業職から介護職へ。専門、大学で学んだ4年間。
“心”を土台に知識や技術がプラスされて、人の役に立てるんだということを学びました。
2階建てアパートの1階横並び3部屋が『ふれあいネットまつど』の事務所。
―青木さんは、介護職に就く前、営業のお仕事を長くされていたと伺いましたが。
元々は営業事務でした。ところが途中でバリバリの営業へ異動になり、『私には無理…』なんて思っていたんです。でもいざやってみると、営業ほど面白い仕事はないな、って。色々な方からお話を聞く機会があるので、学ぶことも多く、自分のなかに引き出しがどんどん増えていく感覚が楽しかったですし、有り難いなと。例えば、相手の方が「釣りが好き」と言うと、その関連の本を読んでみるんです。その方にまたお会いする際には、得た知識を織り交ぜながらお話をする。すると、とても喜んでくださるんですよね。自分の好きなことに興味を持ってくれた、というのはやっぱり嬉しいんですよ。こうした感覚は私の肥しになっていて、今の介護職にもすごく活かされています。
青木さんの席は、一番右奥の部屋。シフト確認と合わせて電話対応も。
―青木さん自身、営業職が楽しいと思えたということは、人と会って話すのが得意な方でもあるんですね。
ですかね。「“人と仲良くなる”を特技のなかに入れてもいいぐらいだよ」と言われたことはあります。どんな時も、相手のお話を聞く、教えていただく、という姿勢で入っていけば大丈夫ですよ。
ご利用者さん宅への訪問は両手があく斜め掛けバッグ、というのが青木さんのこだわり。普段は背中に、物を取り出す時はくるっと前に持ってくる。
―その後、介護職にはどのような経緯で?
ヘルパーの資格は、父が他界し、母が実家で独り暮らしとなるのを支援するために取りました。転職も考えていた時期だったので、学校に通うと同時に勤めていた仕事も辞めて。ところが、資格取得できた矢先に母が心筋梗塞で倒れて病院生活になったんです。そのため自宅で手助けするというよりは、ずっと付き添いで私も病院にいる生活が続き…。その間福祉について改めて考えるようになりました。母は認知症状で、寝なかったり、ベッドから降りたり、点滴を抜いてしまったりで、家族がいない時はベッドに拘束されるようになりました。そんな病院の体制を肌で感じながら、色々考えさせられることも多くて。福祉により一層興味が湧いてきた頃、ハローワークで介護福祉士になるための訓練制度があるよ、と教えてもらい、通うことに決めました。
訪問は自転車が多い。事業所用に最近高性能な電動付き自転車が導入されたそう。<
―ではその専門学校で介護福祉士の資格を取ったわけですね。その後はすぐ就職を?
いえ。その後大学に行ったんですよ。介護福祉士を取得するための2年間で母と主人を亡くしました。当初は、二人の面倒を見られればと思って頑張っていたのに、その対象を失ってどうしたらいいんだろう、と。でもそこで途方に暮れるのは嫌でしたし、福祉ってもっと深いんじゃないか、と学びたい欲がどんどん出てきて。もっと広い視野で福祉を勉強するために大学に行くことにしたんです。
訪問に向かうスタッフの方2名をキャッチ。慌ただしくも軽やかに。
―そうだったのですね。辛い経験をたくさんされて、それでも常に前を向いて歩いてこられたんですね。大学で福祉を学んでみてどうでしたか?
簡単に“福祉”と言うれど、一言では語り尽くせないですよね。100人いれば、100通りの支え方がある。色々なことを知っていないとダメですし、かといって知識だけあってもダメ。人に対する考え方や想いがないと、いくら知識があっても漏れてしまうんですよ。“心”が土台にあって、そこに知識や技術がプラスされて、初めて人の役に立てるんだということを徹底的に学びました。
スタッフの方。元気にハキハキと笑顔で部屋のなかを案内してくださいました!
―なるほど、深いですね。在学中は、卒業後のビジョンなどあったのですか?
はい。社会で孤立している人たちの手助けをしたいと考えていました。それは今でも持ち続けている夢です。介護サービスを受けている人たちは多少なりとも人との関わり合いがあるけれど、そういうのが全くない人も必ずいて。家から出ずに社会や地域から断絶されている人たちの発掘やコミュニティ作りができないものか、と。でもそれをやる前に、まずはそこに住む人達のことをもっと知らなければ、と思いました。そのためにまずは、地域や在宅で生活する方々の想いを知ることのできる訪問を経験してみよう、と。それでたまたま大学の卒論で視察させていただいた今の職場『たすけあいの会 ふれあいネットまつど』の副代表の奥田に声をかけていただき、こちらで働くことになりました。
―何だかお話を伺っていると、何かに導かれるようにして介護に足を踏み入れた感じがしますね。
本当ですね。自分の前に起きることや人との出会いは、必ず何か理由があって起きているのだとよく感じます。今があるのも、きっとなるべくして、なんでしょうね。