(5) 小さなサインを大事にしたい。

>▲利用者さん立場になって話を聞くよう心がけているそう。
―利用者さんと心が通い合ったなと思う瞬間は、どんなときですか?
戸館さん:基本情報に載ってこなかった新たな情報を、利用者さんが自ら打ち明けてくださる時でしょうね。たとえば、現在の家庭の事情とか昔の話しとか、悩み事とか。話の内容は様々ですが、ケアマネージャーさんにも打ち明けてなかったことを仰るんです。それがひとつの小さなサインだなって思っています。
▲「この時期、利用者宅の暖房のチェックは欠かせません」と戸館さん。
―そのときに気をつけていることは?
戸館さん:内容にもよりますが、そこで解決しようとはせず、とにかく聞き役に徹します。「こうしましょう」とか、「こうじゃないの?」とはその場で決して言いません。せっかく話し出してくださったのに、その大事な第一歩を台無しにしてしまうと、もう二度と話してくれません。そうならないように、どんどん話がしたくなるような環境を作るよう心がけています。「この人に話せば、何か変わるかもしれない」そう思ってもらえたのなら、最初の難関は突破。その後、私だけでなく、同じネットワークの人にだったら誰に話しても何らかの解決策があるんだと分かってもらえるよう、チーム一丸となってお世話します。
私たちの仕事は1対1で聞いていても、1対1の仕事ではありませんからね。常に1対チームでサービスを提供しているわけですし、私はひとつの窓口に過ぎませんしね。でも、利用者さんの中にはもっと密な関係を求めていらっしゃる方も。そんな時には「許してね」って言っちゃいます(笑)。この人じゃないとダメって環境は、どういう場面においても良くありませんからね。
―でも、そう言われると嬉しいですよね。
戸館さん:ええ。サービスじゃなくても呼び出しをしてくる利用者さんもいるんですよ。ダメだと言っても、指名制じゃないと言っても「分かってるんだけどね」と連絡してくるんです。困ったなって思う反面、そういう利用者さんの声が嬉しかったりもします。
▲同行スタッフを指導しながら作業を進める。
そういうのを聞くと、この仕事を辞められないなって思いますね。仕事を続けている限りは、そんな利用者さんともどこかで繋がっていられますが、辞めてしまったらもう二度と会えませんから。私は介護のプロとして利用者さまと接しています。だから、利用者さまに堅苦しいと言われようが、水臭いと言われようが、笑顔で「いつまでもこのままです♪」ってお返事しています。