今朝来たヘルパーさんがぜん息で声が出なかった。低い声でかすかに彼女の声が聞こえる。去年も同じことがあったので「分かりました。あなたはもう喋らなくてもいいです。どうしても困ったことがあれば私から話します」と言った。
そのヘルパーさんはもう5年以上も来てくださっているので、あうんの呼吸でケアをできる人だ。いつものようにケアを進めていった。広い部屋の中、二人は沈黙で動いていた。何か不思議な空気が流れている気がした。洗面している時、いつもなら「ありがとうございました。もういいです」と気を遣うが、今日は黙って進めた。朝食の時は、黙ったまま箸とスプーンを使い分けすることができた。今日の私は、どんな原稿を書こうか、何か仕事は残っていないか、訪問で来る人にどんなことを話そうか、と仕事のことばかり考えていた。一人暮らしの人はこうして黙って考えながら、食事をすることを知った。ヘルパーさんの姿がちょっとだけロボットのようにも思えた。たまにはロボットも良いな。あまり気を遣わなくてもいいかもしれない。
互いに気を遣いすぎて、言わなくてもいいことまで言ってしまうことがある。「あぁ、失敗」と反省する。ケアを受けるということは、不思議なことなのだ。
今日の朝ごはんはとてもおいしかった。慣れたヘルパーさんには、必要以上に話さなければ、と思わないほうがよいのかもしれない。食事をおいしく感じ、1日のスケジュールをずっと考える。自然な生活が送れたような気がする。しかし、ぜん息のヘルパーさんには1日も早く元気になってほしい。幸せな時間を感じる朝であった。