■ヘルパー歴7年、少しは先輩ヘルパーに近づけたかもしれません。
―今日、訪問させていただくお宅は、ご主人を介護されている奥様の補助で入られるんですよね。
安河内さん:はい、そうです。ご主人は7年ものあいだ寝たきりなのですが、奥様の熱心な介護は、私たちプロ以上で、いつも勉強させていただいているほどなんです。
▲新しく入るヘルパーさんに同行。指導する姿は真剣そのものだ。
―安河内さんが介護を志したキッカケは何だったのでしょう?
安河内さん:ヤクルト販売員をしていた当時の高齢者との触れ合いです。お一人暮しの高齢者のお宅を訪ねていると、自然に生活ぶりや体の具合などが目に入ってくるんですね。あまりにお部屋のカーテンが閉め切られていたり、外出をしていない様子などを見ると、お食事はきちんと摂れているのかなどと気になったりしました。
いつものように尋ねて玄関の扉を叩いても返事がないときなど、心配でお隣に様子を尋ねることも。そうした高齢者との触れ合いがある中で、すでに介護の仕事を始めていた友人からの話を聞くと、介護職に転向したい気持ちが強くなりました。その頃にちょうど家族の介護もしていたので、タイミングが重なったというのはあるかもしれません。
―ご家族の介護とヘルパーのお仕事が重なるのは大変ではなかったですか?
安河内さん:その頃は登録制のヘルパーとして働いていたので、時間の自由は利きましたし、仕事と家族の両方を通して介護の勉強ができたような気もします。自分が成長できる現実があったおかげで、実践の場で冷静に対応できたという意味では、よかったと思っています。
―登録制のヘルパーから社員に転向された理由は?
安河内さん:たまたま社員の方が辞められて、お声をかけていただいたことを機に、本格的に始めようと思いました。
―登録制と社員でのヘルパーに違いは感じましたか?
安河内さん:やはり仕事上での責任が重くなるのは感じましたね。登録でしたら、上に報告で済みますが、社員は自分で判断することも多いですから。最初は、ベテランのヘルパーさんを見ながら勉強しました。
▲買い物中には、なるべく新鮮で長持ちする商品を選ぶことにも注視。
―やはり経験あるヘルパーさんから学ぶことは多かったですか?
安河内さん:そうですね。ケアにあたりながら、いつ確認しているんだろうと思うようなところまでチェックが行き届いているんですよ。例えば体の状態なら、発赤やキズなど見た目に分かりやすい部分はチェックできるんですが、ベテランさんだと表情や顔色までしっかりと見ているんです。そして利用者さんに触った感じや息の仕方など、あらゆる方向から利用者さんの状態を確認して、些細な変化も見逃しません。身体介護も長く関わると、触れて痛む部分とそうでない部分を見分けられる感覚が備わってくるものなんですよね。
そんなふうに細やかな視点が備わると、利用者さんとの関わり方にも余裕が生まれ、利用者さんや介護者さんへの安心・信頼へとつながるんだと思います。
―安河内さんもヘルパーを始めて7年、ベテランさんに近づいたと思いますか。
安河内さん:ちょっとは近づけたかなと思いますね。やはり、利用者さんよりも先に気づきたいという思いは常に持っています。
▲初めての買い物同行が無事に終了した帰り道、利用者さんとの談話で笑みがこぼれる。
―では最後に、ヘルパーを目指している方々にメッセージをお願い致します。
安河内さん:ヘルパーというのは、何十年と生きてこられた利用者さんの最後のときを一緒に過ごさせていただくお仕事です。ですから、その方の人生があって、今こうして関わらせていただいていることを思いながら、一つひとつの触れ合いを大切にしてもらいたいですね。
■編集後記
30度を超える真夏日に、「埼玉ライフケアサービス」の玄関を開けると、安河内明美さんは暑さを吹き飛ばすようなハツラツした笑顔で出迎えてくださいました。管理者でもある安河内さん、とにかく忙しく、昼食を摂のるも仕事をこなしながらのわずかな時間。休む暇がないとは、このことをいうのだと思い知らされるようでした。
それでも元気な安河内さんのヘルパーとしてのモットーは「常に元気に明るく利用者さんと接する」。いつも絶やさないよう心がけているという笑顔は、過去の銀行員時代やヤクルト販売員時代に培ってきたものだといいます。
利用者さんにエネルギーを分けるように、元気な笑顔を向ける安河内さん。
この夏も、朝霞市内を忙しく駆け回るのでしょう。
▲あさか訪問介護事業所のスタッフの皆さん。
今回の取材にご協力いただいた、「埼玉ライフケアサービス あさか訪問介護事業所」のスタッフの皆さま及び利用者さまには、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
「へるぱ!」運営委員会一同