■介護職歴17年で、余裕を持てるようになりました。
▲車で移動中。混雑しがちな大通りを避けて移動するため、地元のヘルパーさんは抜け道にも詳しいのだとか。
―梅津さんは、もともと障害者施設での経験を積んでいるんですよね。
梅津さん: はい。私が介護職に就いた頃は、まだ介護福祉の仕事が珍しい時代で、当時は“施設3年”といわれていたんですよ。3年経つと、その施設のことがだいたい分かるので、3年ごとに施設を移りスキルアップしていくというものでした。私もその考え方でしたが、在籍していた施設が次々と新しい展開をしていったので、忙しさの中であっという間に10年が経っていましたね。
▲スポンジブラシを使って口腔ケアする、利用者さんの様子を見守る梅津さん。
―10年も施設を経験していながら、在宅に移行したのはなぜですか?
梅津さん:在宅の介護に興味を持ち始めたからです。施設ではたくさんの経験をさせていただき、身体に障害を持たれていても“できる”可能性を持ち続ける大切さを教わりました。とくに印象的な出来事は、腕に拘縮(こうしゅく)のある方が、器用に足でお食事をなさっていたことですね。飲み物も、コップの持ち手を足の指で挟んで口まで運ばれます。足で編みものをなさったり、長い髪の毛を耳にかけられる様子を見かけたときは、衝撃を受けました。こんなにいろんなことができる可能性があるなんてすごい! と。それで、もっと介護の可能性を開拓したくなったんですよ。
施設は利用者さんが過ごしやすいバリアフリーで、色々なことに挑戦しやすい環境も整っていたので、結果も出してきました。しかし在宅では、お宅によって段差や階段などの住宅環境がさまざまですよね。条件が決められてしまったお宅で、どうやったら利用者さんに快適に暮らしていただけるのか、ご本人を中心にさまざまに関わる方たちと一緒に考えて工夫していくのは、やりがいがあって面白そうだと思ったんです。それで在宅に移行しました。
―施設での経験が今に活かされていると思うことはありますか?
梅津さん:何があっても驚かずに余裕を持って対応できることでしょうか。施設には意思疎通が難しい方もたくさんいらっしゃいましたので、不意の事態などは日常茶飯事でした。同じように現在の在宅介護でも、急病で救急車を呼ばざるを得ないなどの事態に遭遇することがあります。そういうときに私たちが慌ててしまっては、利用者さんがますます動揺なさるばかりですから、どんなときでも信頼していただける存在でなくてはならないと常々考えています。
利用者さんやご家族の方が不安そうになさっていても、冷静さを崩さず安心していただけるようにと言葉を選んで声をかけ、微笑む余裕のある自分がいるんですよね(実際のところ心臓バクバクなのですけど)。余裕のある表情で利用者さんと接することができているのは、数々の経験を積み重ねられる環境を与えていただいたおかげかなと思っています。
>▲介助のあい間には、利用者さんとのコミュニケーションも欠かさない。
―たくさんの経験がヘルパーとしての梅津さんを大きくしているんですね。
梅津さん:そうですね。あとはケアマネージャーの資格を取得したことも、ヘルパーとして成長できたひとつかもしれません。ケアマネージャーの知識を得たことで、利用者さんの理解のしやすさに配慮しながら介護保険を説明できるようになった気がしますね。そして何より、現場と介護保険の両面から客観的に介護を捉えられるようになったのは、大きいと思います。
サービス提供責任者として担当者会議に出席したとき、現場の思いと書類上の内容をふまえて提案していくとケアマネージャーさんも話に耳を傾けてくださいますから、事業所内で連携を図るときにも活かされていると感じています。
―梅津さんにとって介護職とはどんな存在ですか?
梅津さん:とても奥が深い存在です。介護保険があるとどうしてもケア自体が制限されてしまいますから、利用者さんの希望のままにサービスするというのは難しいのです。しかし制限がある中で、どれだけのどんなサービスをしてさしあげられるだろうかという知恵が生み出されるところはやりがいがあります。どんどん新しいことを取り入れて、利用者さんに「安心」と「快適さ」を提供していきたいですね。
■編集後記
▲「生活クラブ 柏介護ステーション あいの手」のスタッフのみなさん。
取材当日、約束の時間に事業所の扉を開けると、「もう出ちゃうんですけど、大丈夫ですか!?」と、現場に向かうための身支度を整えていた梅津さんが元気よく出迎えてくださいました。和やかな雰囲気に包まれている梅津さんのデスク周り。まだ務め始めて1年目だそうですが、すでにムードメーカーの役割を果しているよう。
事業所については、 「スタッフみんな仲が良いけれど、きちんとオンとオフを切り替えられる職場なので、とても働きやすいですね」 と、お話してくださいました。
今回の取材にご協力いただいた、「生活クラブ 柏介護ステーション あいの手」および利用者さまには、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
「へるぱ!」運営委員会一同