(2) キッカケは、「好奇心」。

>▲スタッフと打ち合わせをしながらの事務作業。
―介護の仕事にはもともと興味があったんですか?
戸館さん:どうなんでしょうね、自分でも良く分かりません(笑)。介護とか福祉に興味を持ったのは、自然といえば自然だったようにも思います。
―というと?
戸館さん:小学生の頃、ガールスカウトに入っていたこともきっかけになるかもしれません。地域の人たちとのふれあいの中で、福祉や介護に対する気持ちが徐々に大きくなっていったのは確かです。そんな時に、ある先生から「福祉っていうのはいいんだよ、興味があるんだったら勉強してみたら?」と言われたんです。仕事のための福祉ではなく人のため(=自分のため)の福祉だ、福祉は人が生きていくために必要な勉強なんだと、その先生に教えられました。
―素敵な先生ですね。
戸館さん:ええ。その先生の教えがずっと心に残っていたのもありますが、この世界に入ることになった決定打は祖母の介護を通じて感じた違和感でしょうか。
―違和感、ですか?
戸館さん:違和感というより、興味とか好奇心といったほうがいいかもしれませんね。中学校3年生のとき、ちょうど進路を決定する頃の話なんですが、私は認知症の祖母の介護を目の当たりにしたんです。自分の子供の名前すら分からなくなっていくのに、他人でも身内でも関係なく、分からない人のことは判らないし分かる人のことは分かる。今になって思えば祖母の認知症は非常に穏やかだったと思いますが、当時の私にはとにかく不思議でならなかったんですよ。
祖母が事実に反したことを言ったとき、祖母の気持ちを察して接したり呼びかけたりしてくれる人のことは分かるのに、間違いを正そうとしたり否定的なことを言ったりする人、冷たい態度をとる人のことはどんどん分からなくなっていくのは何故だろう、その不思議を解明したい、専門的に勉強してみたいって思ったんです。
―なるほど。戸館さんの介護業界への扉は「知りたい欲求」によって開いたわけですね。
戸館さん:そうなるのかなぁ。でも、なぜそこに興味を持ったのかがいまだに自分でもよく分からないんです。でも、とにかく気になっちゃって。それで、高校から福祉科に入って勉強をすることにしました。
▲施設職員の方と一緒にクリスマスツリーの飾りつけ。
―高校入学の頃にはすでに将来を考えていたなんて、凄い!
戸館さん:本当は普通科の高校に通って、その後専門学校に入るつもりだったんですけれどね。通学できる範囲内の高校に福祉科が新設されるという話をたまたま聞いて、急遽針路変更をしたんです。そして無事、念願の福祉科に合格。私はその高校の福祉科の第一期生になりました。進路変更をしたのが1月ですからね、本当にラッキーでした。
戸館さん:もちろんです。選択は間違っていなかったと思います。高校で出会った先生にも恵まれましたしね。まだまだ子どもだった私の福祉や介護に対する考えに共感してくださったある先生が、「学校は就職、就職と言うけれど、必ずしも仕事に就かなくてもいい。走らなくていい。ゆっくり考えながら歩けばいい。でも、掴むものはしっかり掴んで卒業しろ」と言ってくれたんです。その言葉に励まされ、背中を押されました。だから急がず慌てず、私らしく介護や福祉と関わっていこうと思えたんでしょうね。