2000(平成12)年4月にスタートした介護保険制度は16年目に入り、わが国における高齢者福祉対策の中心的制度となりました。特に今年度からは、医療制度などを含めた社会保障制度全体の改革をめざす政局の方向性により、介護報酬や各種基準の改訂にとどまらない法改正が行われています。
そもそも、介護保険制度には「介護の社会化」を実現するという大きな目的がありました。家族介護による家族の負担を少しでも減らし、介護費用を国民全体で公平に負担するためにも医療と同様に社会保険制度の導入が行われ、民間活力の導入により、介護サービス事業者も増加しました。
しかし、当初の予定を大幅に超える少子高齢社会の進行による利用者の増加と保険料の負担増、経済状況の長期低迷、相次いだ事業者による介護報酬不正請求などにより、保険制度の維持そのものが抜本的な検討を迫られるようになっています。
利用者に身近な自治体である市町村単位の運営に加え、地域の実情に応じて、認知症や寝たきり高齢者を地域で支える「地域包括ケアシステム」の構築が提起され、介護保険本体の財源負担を抑える方策が具体化されようとしています。
本来の住み慣れた地域社会の中で日常生活を維持していくためにも、私たちは何をすべきなのか、制度の課題は何なのか、今後このコラムで取り上げていきたいと思います。