聖母シルバーピア岡谷での9年間
今までのやり方を変えてみようかな、と思えたのもパートナーのおかげです。
訪問介護事業所本体がある、高齢者集合住宅 聖母サポートピア諏訪湖にもお邪魔しました。
―シルバーピアにいらして、まるごと任された竹島さんにとって、辛かった…というのはどういう部分でですか
今ほど道具もマニュアルもなく、働くヘルパーさんは、ついこの間まで主婦や精密業で働いていた方がヘルパーの資格を取り、この業界に入ってきた経験のない方々ばかり。一方引っ張っていくべき立場の私は「身体介護って?」「限度額って?」と初歩的なことすら知らないわけです。なんとかやっていこう!とは言ったものの、大金を支払って入居されるご利用者さんに申し訳ない気持ちでいっぱいでした。誰に何を相談したらいいかも分からず、その不安を押し隠すかのように強い自分を演じたりして。下のスタッフにはだいぶきつくあたっていたと思います。当時からいるスタッフに聞いたら「竹島さんって厳しくてね、きつくてね」というイメージしか出てこないと思いますよ(苦笑)。そんな風だから、人に任せることもできない。何もかも自分で抱え込んでしまって、下のスタッフも育たず…悪循環でしたね。
1Fには、喫茶室が。冬期限定おしるこや夏期限定アイスクリームのメニューも。
―それでも今の竹島さんがあるのは、どこかに転機があったからだと思うのですが・・・。
はい。まずは所長がいらして、色々整備していただいたのが大きかったです。所長には「何もしなくていいからとりあえず笑ってろ」なんてことも言われまして。4年ぐらいずっとです。当初はその意味も分からず「やることがあるのになぜそんなことを言われなきゃいけないのだろう?」って。でも振り返れば「介護が笑って楽しい」という本来の感覚も失われていたんだと思います。私の顔からも笑顔は消えていたんでしょうね。上が笑っていなければ下も笑えないですよね。それにも気付かず、とにかく突っ走っていた最初の数年間でした。それが4年目のとき、サ責である私のパートナーに抜擢された人がすごくて!
広々とした食堂からは、諏訪湖が一望できる。晴れている日は最高の見晴らし!
―というと?
所長と同じく介護に対して熱い想いを持った方だったのですが、なんと介護経験が2年ぐらいしかない方で。次期サ責になるであろうスタッフを飛び越えての大抜擢だったわけです。普通ではありえないその人選こそ私にとって当たり!でした。というのも変な言い方ですけれどね。素晴らしい人選だったと思います。その方とパートナーを組むことで色々なことに気付かされました。私のことをどんどん否定してくるんですよ(苦笑)。正直悔しいじゃないですか。でも言われることで改めて自分を省みるきっかけにも。会社をよくしていきたい、私をよくしていきたい、という彼の想いも伝わってきましたし、何よりそれがよりよい現場環境づくりにもつながって、周囲のスタッフと一緒に同じ方向へ向かって進むことができるようになったのが6年目のときです。パートナーからいい刺激を受け、相乗効果で私も今までのやり方を変えてみようかな、と思えたのもその時でしたね。「楽しい介護を提供する」「笑っていなさい」ってこういうことだったのかなって。
旅館のような雰囲気の脱衣所。清潔感があり、温泉気分で楽しめます。
―ようやく、自分のなかでのターニングポイントを迎え、これからまた頑張ろう!と思えたその時期に「辞めたい」と所長に話したことを、先ほど所長から伺ったのですが・・・。
(苦笑)。燃え尽きちゃったんですよね。訪問介護事業所のサ責だけでなく、シルバーピアのサービス管理やそれに関わるご利用者さんやご家族の方、抱えているものが多すぎて、それ以上ステップアップする気力がなくなってしまった…。さらには、そのパートナーが異動になり、一人に戻ってしまった不安感と、切磋琢磨できる相手がいなくなった喪失感みたいなものもありました。もう荷をおろしたいなって。所長に辞表ともいう、徒然なる思いを書いた手紙をお渡ししました(苦笑)。
入浴介助の設備もしっかり整い、どこもゆとりのある空間づくり。
―その手紙を受け取った所長に説得されたりして続ける決意をされたとか?
いや、説得はされていないです。所長は「どうなの?」といつも疑問符で終わらせる方なので。最終的には自分で考えて答えを出さなければいけないのは分かっていたんです。冷静になって自分を見つめ返すと、やっぱり自分のためにもう少しやってみようかな、と思うんですよね。ゴールは見えないんですよ。でも、もうちょっと、もうちょっと・・・って踏み出した一歩は、後になって振り返るととても大きくて。「あの時一歩前に進めてよかったな」って思うんです。そうやって常に一歩ずつ踏み出している感じです。