ご利用者さんとの信頼関係を築くまで
1人1人生活歴が違うことが介護の難しさでもあります。
距離の遠いご利用者さんも多いので、車の移動がほとんど。
―豊田さんは現在、サービス提供責任者とヘルパー業務どちらも兼ねていらっしゃると思うのですが、ご利用者さんをケアするなかで気をつけていらっしゃることなどありますか?
ご利用者さんの言葉によく耳を傾けて、何を思っているのか、考えているのか、言葉にならない部分に気づいてあげられるように意識しています。「これはしてもらえて嬉しいんだけれど、でもね…」という「でもね…」の後にご利用者さんの本心が隠されているような気がするんですよ。そこは大事にしたいですね。
ご利用者さんの状況を気にしながら、お宅に向かう。
―本心を素直に表現できないご利用者さんもいらっしゃいますものね。そういう方には豊田さんご自身が積極的に声をかけるなど、何らかのアプローチをされたり…?
そうですね。ただ私自身、ご利用者さんにとって邪魔にならない存在でいたいなと常に思っています。ご利用者さんそれぞれに立ち入られたくないバリア圏があるので、そこに踏み入らないよう手探りしつつ、一歩一歩近づいていく感じでしょうか。
「最近意識を失った…」と言うご利用者さんに手の感触を確かめて身体状況をチェック。
―居心地のよい空気感って人によって違うから、お互いの距離感をつかみつつコミュニケーションをとるのは大変なのでは?
馴染みの関係が出来るまでには、やはり時間がかかります。「こうして欲しくなかった!」って言われることもありますし。掃除の仕方、料理の仕方、洗濯の仕方どれ1つとってみてもご利用者さんそれぞれ違うんですよ。自分のなかで当たり前と思っていたことと逆のことを望まれることもあり、自分のものさしだけでは測れないなぁ…と。その方の価値観を決めつけないケアをしていきたいですね。
ケア内容の記録などをしっかり確認して、気づいたことをご利用者さんにも聞きます。
―介護のためとはいえ、他人が人の生活に入っていくことの難しさをお話を伺っていて改めて感じました。その方の生活歴を探るために豊田さんがされていることって何かありますか?
毎回試行錯誤ですよ。買い物したゴミをちらちら見て、こういうものを購入されているから好物なのかな? など、本当にささいなことにも目を配るようにしています。それにご利用者さんの身体状況が日々一定でない点も注意が必要ですね。身体機能の低下につながる食事量などもこまめにチェックしています。毎日、毎日が生きた学習場所だなって思わずにはいられません。
ご利用者さんに「何かあった時はすぐ連絡して!すぐに駆けつけるから」と伝える豊田さん。
―確かにご利用者さん自身も日々変化し、介護するヘルパー側も変化する…何1つとして同じ状況はないわけですものね。
そうなんですよ。改めて介助援助ほど難しいものはないなって感じています。この仕事は一人で抱えこんでいたらダメだと思うんです。困ったら周囲の方に相談し、ご家族の方にも協力していただく、そうした色々な方たちの協力があってこそ、成り立つ仕事なんじゃないかなって思います。
編集後記
豊田さんが『にこにこ三豊』に来て最初に抱いた「明るい!」という印象通り、事業所で働く皆さん、朗らかで活気にあふれる方たちばかり。それでいて、ほっとくつろげる穏やかな空気感もあり…。外部の私たちですら、すんなり馴染んでしまうような不思議な心地良さがありました。同じ一軒家ないにあるデイサービスを少し覗かせていただいたのですが、ご利用者さん皆さん、何だか楽しそう。事業所名でもある『にこにこ』どおり、職員だけでなくご利用者さんもにこにこ笑顔でいられるような、そんな温かいケアが実現できているように感じました。
今回、取材にご協力いただいた豊田純子さんはじめ、『特定非営利活動法人 にこにこ三豊』の職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同