■実際に体験したことで、ご利用者様の気持ちが理解できました。
▲新人ヘルパーさんの訪問同行中には、事前打合せを行う。
―沢山の施設がありますが、それらに訪問するヘルパーさんは何人ほどいらっしゃるのですか?
三澤さん:ヘルパーは全員で19人です。およそですが、一人のヘルパーさんが、1日6件ほどの訪問に伺いますね。
―皆さん、沢山のケアをなさっているんですね。ケアの内容は?
三澤さん:ご利用者様のケアは、介護度によって大きく異なりますが、各ご利用者様の身体状況や生活環境・家族構成によってもケアの内容を考えなければなりません。
ですから私達ヘルパーは、訪問にうかがった際にご利用者様の状況を確認し、通常のケア内容はもちろん、ご利用者様の状況に応じたケアもできなければなりません。そのため、ヘルパーさん一人ひとりがその時々の状況に合わせ対応できるように、日頃から知識と技術の面でも研修会を通してスキルアップを行っているんです。
▲ご利用者様の入浴前には血圧測定を。
―最近はどんなことを勉強しているんですか?
三澤さん:今年の1月から4月にかけては、ヘルパーさん達に初心を思い出してもらうための勉強をしていただきました。基本を学んでいるとはいえ、長年ヘルパーをしていると、どうしても初心の気持ちから遠のいてしまうんですよね。そこで「オムツ体験」をしていただきました。
―オムツ体験というのは?
三澤さん:ヘルパーさん自身に直接オムツをあてていただくんです。リハビリパンツを持ち帰ってもらい、寝ている姿勢で排泄をします。自分がオムツを体験することで、“濡れる”という気持ちや感覚を分かっていただきたかったんです。それを味わうと、濡れている気持ち悪さが肌身を持って体感できるので、濡れたオムツを早く交換する必要性が痛感できるんですね。私も体験しているんですけど、座った状態と寝た状態でのトイレはまったく違うんですよ。初心の気持ちが薄れてくると、ご利用者様への気持ちに気づくことができなくなってしまいます。ですから、体験するのがいちばんいいのかなと思っています。
―ヘルパーさん達の研修をするうえで、三澤さん自身も勉強なさっているんですか?
三澤さん:それはもちろんです。勉強なしでヘルパーさん達を教える立場には立てませんからね。幸い、私達の法人は学べる環境が整っているため、時には老健(介護老人保健施設)などに行き、ヘルパーさんが機械浴など、訪問介護以外の勉強をすることもできます。私自身も福祉に関する多種多様な現場経験をさせていただいて、違った視点から介護を見つめ、考えられるようになりました。ご利用者様への関わり方も、施設側は全体を通してご利用者様一人ひとりを見ています。しかしヘルパーさんは、ご利用者様との決められた時間で1対1で関わるため、ご利用者様の声を直接聞くことができます。この両方の視点を知ることができたのは、私としては大きな財産だと思っています。
▲新人ヘルパーさんと一緒に介助に入り、熱心に指導する三澤さん。
―視点が変わるとご利用者様との関わりにも変化は出てくるのでしょうね。
三澤さん:そうですね。私がご利用者様と接するときも、近づいたり遠目で見たりと、ご利用者様との心の距離をはかって接することができるようになった気がしています。
最近関わったご利用者様の中で、ヘルパーの支援を受け入れてくださらない方がいました。その方に関しても、毎日訪問して声をかけていくうちに、少しずつヘルパーの存在を受け入れてくださるようになり、自ら声をかけてくださるようになられました。こうして接しているうちに、ご利用者様のほうからヘルパーステーションに立ち寄ってくださるまでになられ、笑顔も見られるようになりました。
訪問介護は一人のヘルパーで行うものではありません。自分だけを受け入れてもらうというのではなく、他のどのヘルパーさんが関わりを持っても同じように関わることができるように考えていかなければなりません。
私自身、接し方や関わり方など、様々な角度から考えることができるようになったのは、大勢の方々と接し学びがあったからです。私が学んだことと、各ヘルパーさんの視点で気づいたことを重ね合わせ、関わることで、ご利用者様がよい方向へ進んでくださることが、私はとても素晴らしいことだと思っています。
■ハードワークだからこそ、仕事と家庭の両立を大切に考えたいですね。
▲親身にヒザが痛いと訴えるご利用者様の話に聞き入る。
―三澤さんが介護を目指したキッカケは何ですか?
三澤さん:そうですね。育った家庭環境にあると思います。
私は、祖父母、両親、妹2人、私の7人家族で、子どもの頃は両親が共働きのため、学校から帰ると妹と祖父母と一緒に過ごすことが多く、両親から学ぶことと祖父母から学ぶこととに世代を感じた関わりがひとつのキッカケだったのではないかと思います。
その関わりがあったおかげで、介護の仕事に就くのは小さい頃からの夢でした。特に高齢者と関わる仕事をしたいと思っていました。
―では、就職と同時に介護業界に入られたんですか?
三澤さん:いいえ、自分の思うように就職することはできませんでした。でも21歳で結婚をし、主人に「私は介護の仕事がしたい」と話をしたんです。主人も仕事に反対はしませんでした。「家庭を第一に考えて仕事をしていく」ということで仕事を始めることにしたんです。それで子どもが保育園に通うようになってから、本格的に始めました。最初は子どもが保育園に行っている間に仕事をしていました。しかし、それだけでは物足りず、介護についてもっと学びたいという気持ちがどこかにありました。三澤さん:いいえ、自分の思うように就職することはできませんでした。でも21歳で結婚をし、主人に「私は介護の仕事がしたい」と話をしたんです。主人も仕事に反対はしませんでした。「家庭を第一に考えて仕事をしていく」ということで仕事を始めることにしたんです。それで子どもが保育園に通うようになってから、本格的に始めました。最初は子どもが保育園に行っている間に仕事をしていました。しかし、それだけでは物足りず、介護についてもっと学びたいという気持ちがどこかにありました。
▲デスクワーク中の三澤さん。ユニフォームのグリーンカラーは、ご利用者様に「明るさと元気を」という思いから決定されたのだとか。
―ハードな介護のお仕事でありながら家庭と両立するというのは、やはり大変なところもありますか?
三澤さん:自分が好きで始めたことなので、大変だと思ったことはありませんね。でも、忙しくてハードな仕事だけに子どもへの影響が気になっています。母も「働くことはいけないことではない。子どもだって、親の働く姿をみて子どもなりに働くことの大変さや苦労はわかってくれているよ」と言ってくれました。実際に息子も、働く私を応援してくれます。催し物で使う手作りプレゼントや資料作りなどを手伝ってくれています。そんな息子の姿を見ていると本当に嬉しいです。
家庭を持ちながら仕事をするというのは、家族の協力なくしてはできないことで、私は本当に恵まれた環境の中で働かせてもらっているのだと家族にはとても感謝しています。
▲ご利用者様に触れる三澤さんの左手の薬指にはキラリと光る指輪が。
―ご自身の役割を果たしていけるのは、ヘルパーの皆さんの協力があってこそ、なんですね。
三澤さん:確かに仕事も大事なんですけど、介護職は各ご利用者様のご家族様とも密接に関わります。そういう意味でも、自分の家庭もおろそかにしていてはこの仕事は務まらないと思うんです。母であり妻である限り家庭を大切に考えてもらいたいのです。そして、何かあった場合には、他のメンバーでフォローしていけるような体制ができればと常に思っているところです。そうした協力体制の中でご利用者様に満足していただけるケアを提供できることがいちばんいいのではないかと思っています。