■周りに支えられた私、今度は現場に返していきたいです。
▲利用者さんの身体介助を行う石原さん。
―石原さんが利用者さんのケアにあたる際、心がけていることはありますか?
石原さん:「介護者がラクをしない」ことです。病院勤務時代、よりよい介護を目指すためにスタッフ全員で患者さんへの介助の仕方を検証する機会がありました。そのときに、目が見えにくい患者さんの気持ちに少しでも近づきたいという思いから、目隠しで食事をすることに。すると何を食べているのか味がよくわからなかったのですが、口に運ぶ前に「これは“肉じゃが”のにんじんですよ~」と、ひと言加えてみたところ、味わうことができたんです。
この一件では、介護を受ける側の気持ちを知った気がしました。ワーカー時代にお世話になった看護師さんが「いまやっている介護が、将来のあなたたちが受ける介護よ」とおっしゃっていたのですが、「今」をラクしてしまったら、未来の介護の質が低下してしまう。だからこそ、介護される側の気持ちを考え、手間を惜しまず関わることが大切なんだと思います。
▲利用者さんと石原さんは、ベランダで洗濯物の乾きを確かめるご主人を見守っている。
―最後に手間を惜しまない介護を実現するため、石原さんが目指していることを教えてください。
石原さん:現在の事業所で訪問介護に携わり始めてから、資格取得や研修参加でさまざまな勉強をさせていただいています。また、「私たちはね、介護してくれるあなたたちが幸せじゃないと幸せじゃないのよ」と励ましてくださった患者さんや、挫折しそうになるたび「仕事はできないかもしれないけど、あなたの仕事への心がまえ、私は好きだよ」と言ってくださった婦長さんなど、本当にたくさんの方々の支えがあったおかげで、今の私があると思っています。今度は私が誰かを支える存在となれるよう、これまでに出会った方々への恩返しの気持ちを込めて、得た知識やノウハウを現場に返していきたいですね。
■編集後記
>▲「ふそうケアサービス」のスタッフのみなさん。
「ふそうケアサービス」の取材にお伺いしたのは、12月のお天気のよい日でした。事業所の扉を開けると、石原さんは笑顔で出迎えてくださいました。
この日のお昼どきには、利用者さん宅を訪問するため事業所を出発。徒歩10分ほどで到着し利用者さんと顔を合わせた瞬間、石原さんは、さらににこやかな笑顔に。
「利用者さんと接する際には、笑顔を大切にしているんです。いま笑ったこともすぐに忘れてしまうかもしれないけど、笑顔はその瞬間だけは楽しんでいることを伝えてくれます。だから、どんな理由でも構いませんから、いつも痛い、苦しいとおっしゃっている方に、少しでも微笑んでいただける瞬間が私には大事なんです」
そう語る石原さんの表情は、この日の青空のように晴れ晴れした素敵なものでした。
今回の取材にご協力いただいた、「ふそうケアサービス」および利用者さまには、心からお礼を申し上げます。
ありがとうございました。
「へるぱ!」運営委員会一同