サービス提供責任者(以下、サ責)には、「サ責」と「ヘルパー」の2つの役割が課せられていることは周知の事実です。しかし、サ責が抱える課題の1つとして、サ責業務とヘルパー業務のバランス問題が挙げられると私は考えています。実際、サ責の中には、「人材不足(ヘルパー不足)の影響で、思うようにサ責業務が行えない」といった悩みを抱えている人も多いようです。
通常、サ責は頭の中で「これはヘルパーの仕事」「これはサ責の仕事」と整理して利用者と向き合うようにしていますが、役割を混在させた対応をうっかりとってしまうこともあります。立場を明確にしないこのサ責対応は、トラブルを引き起こす原因ともなるので注意が必要です。
居宅支援で実際に起きたいくつかのトラブルを分析してみたところ、サ責が2つの役割をうまくコントロールできなかったことに起因するものがありました。具体的に例をご紹介すると、担当ヘルパーの代わりにサ責が訪問してサービスを提供した際、サ責として利用者に助言するも、利用者は「ヘルパーが余計なことを言った」と憤慨したケースです。
このようなトラブル事例からも分かるように、利用者は目の前の人がヘルパーなのかサ責なのかを理解していない事実があります。つまり、支援場面における役割認識のズレがトラブル要因になっているのです。
これらのトラブルを回避するには、自分の発言が1人のヘルパーとしてなのか、サ責としての立場で言っているのかを利用者に認識してもらうことです。発言の意図と自分の立場を明確にしたうえで利用者と向き合うことが、トラブルを回避する方法の1つであると考えます。ただし、理解力の低い利用者の場合は、ヘルパーの立場で利用者と向き合いましょう。サ責として感じた課題は、後日ケアマネージャーなどと共有や協議し合いながら課題解決を一緒に目指すとよいでしょう。
サ責は2つの視点を持つ必要があり、つまり、役割を上手にコントロールすることが求められています。自分の役割を意識しながら利用者と向き合い、役割を意識しながらコミュニケーションを図ることが2つの責務を円滑に進めるポイントではないでしょうか。