>■本当は「人付き合いが好き」なんだ。そんな自分に気づかされました。
▲午後からのモニタリングに向かう米原さん。今では道順もすっかりマスターし、運転はお手のもの。
―米原さんが介護のお仕事を始められたのは7年前ですよね。
米原さん:はい。結婚して子どもが幼稚園に通えるようになった頃から、ヘルパーを始めました。でも本当は、もっと前から介護のお仕事には憧れを持っていたんですよ。
―いつくらいから介護職を考えていたんですか?
米原さん:学生時代からです。でも進路を決める頃、「大変な仕事だから、そう簡単には務まらない」と介護職に就くことを両親に反対されて、断念していたんです。
―それでもまた、介護職に就こうと思ったのはなぜですか?
米原さん:一度あきらめたとはいえ、ずっと介護のことが頭の片隅にあったのかもしれません。それに、“子育ては介護に通じるものがある”という話を聞いたことがあったんですね。それで私も子どもを育てられているなら、介護を仕事にできるかもしれないという自信がついてきたんだと思います。
▲利用者さんの状況確認を行う。
―そして、憧れだった介護のお仕事に実際に就いていかがでしたか?
米原さん:私は九十九里の出身なので、こちらの地理を把握するのがいちばん大変でした。子育てをしていた時期は専業主婦でしたから、ほとんど外を一人で歩いたり移動することもありませんでした。ですから、ヘルパーになり立てで、現役ヘルパーさんに同行し始めた当初は、利用者さん宅までの道順をマスターするのに苦労したのを覚えています。
―今ではすっかり地域に馴染んでおられるようですが、地元の利用者さんから学ぶことも多いのでは?
米原さん:そうですね。やはり利用者さんは経験豊かな方なので、勉強させていただいている感が強いです。たとえば、かぼちゃの煮つけを作る際には、塩を少し振りかけ一晩寝かせてから砂糖で煮付けるとホクホクのおいしい食感になるとか、掃除では畳の目に沿って掃き掃除や拭き掃除をするように床も目に沿って行うという日常での些細なことです。またプライベートでの出来事をお話すると、「こうするといいんだよ」とアドバイスをいただけることもありますね。
そういった些細なことでも、上の世代の方が大事に行われてきているやり方を受け継いでいくのは、私たちなんだと思っています。そうして教えていただいたことを上手に取り入れて、将来を担う若い子ども達の世代にも引き継いでいけたらと考えています。
―7年の介護職をご経験されて、ご自分に感じる変化はありますか?
米原さん:はい。介護職を始める前の私は、人と接するのがあまり好きではないのかなと自分を分析していたんです。しかし利用者さんと話したり触れ合うことに楽しみを見出せている自分を振り返ると、本当は人と接することが好きなのかもしれないと考えるようになりました。そういう意味では、ヘルパーというお仕事が、それまでにはなかった私の一面を引き出してくれて、私自身が成長できている場という気がしています。
▲偶然、出先で利用者さんと遭遇した米原さん。会話を交わすうち、表情には活気があふれた。
―今、そしてこれからも米原さんがヘルパーとして大事にしていきたいことはなんですか?
米原さん:利用者さんの「笑顔」です。こちらが笑顔で話しかけると、利用者さんも笑顔を返してくださいます。そして利用者さんの笑顔から、今のサービスに満足いただけていると感じることができますし、私も嬉しい気持ちになり、お互い気持ちよく過ごすことができるんですよね。ですから、笑顔の絶えない触れ合いを、これからも大切にしていきたいです。
■編集後記
▲利用者さん宅のみかんの木。南房総市は、みかんができるほど暖かい。
大寒に入ったばかりなのに、春の訪れを感じるような暖かい日差しが降り注ぐ1月下旬。都内よりさらに暖かい千葉県の房総半島にある「リブ丸山」で取材は行われました。リブ丸山の施設は山や田園風景に囲まれ、門では日向ぼっこをする猫がお出迎えしてくれるなど、時間の流れも緩やか。
そんな地域に住んでおられるからなのか、米原さん自身も穏やかで、利用者さんと接する様子を見ていると、利用者さんも、とても和んでいるようでした。
しかし、小学6年生と4年生の2児の母でもある米原さん。この日のように早い朝は、5時起きでお弁当作りです。お子さんを学校での朝練に送ってから出勤といった具合に、まだ夜が明けぬ暗いうちから忙しく動き出す働き者でした。
▲「社会福祉法人柚子の会 ホームヘルプサービス リブ丸山」のスタッフの皆さん。
今回の取材にご協力いただいた、「社会福祉法人柚子の会 ホームヘルプサービス リブ丸山」の職員の皆さま及び利用者さまには、心からお礼を申し上げます。ありがとうございました。
「へるぱ!」運営委員会一同