【訪問介護サービス事業の経営推移/事業所の半分は赤字経営か】
平成12年の介護保険スタート時と平成18年度の介護保険改正時の、それぞれ2年後の利用者規模別にみた「訪問介護事業の経営収支推移」は、以下のとおりです。
出所・注:厚労省『介護事業経営実態調査結果(各月間収支)』より編集。収入は、国庫補助金など特別積立金の取崩し額を除いて、補助金収入・借入れ金の補助収入を含んだ額。「2.給与費比率」と「3.利益率」は対収入比。平成20年3月の利用者数は、利用者1人あたりの月間利用(訪問)回数を参考に推定したもの(『介護給付費実態調査月報』より)。
介護保険制度が開始されてから2年目の平成14年3月は、事業規模の拡大によって人件費が増幅。収益が悪化している様子からは、なりふり構わない事業拡大期であったことが分かります。
一方、介護保険が改正されて2年が経過した平成20年3月の利益率を見てみると、規模の大きい事業所は増収や収益がよりよいものに改善され、それまでの経営努力が実ってきていることがうかがえます。
平成14年、20年ともに、利用者規模が50人、人件費(給与日)/収入費80%前後が損益分岐点であるようです。
調査回答事業所の分布は以下のとおりで、利用者数40人以下の小規模事業所の半数は、赤字経営が続いていると推定されます。
出所・上表に同じ
また、平成20年3月の訪問介護利用者全体に占める、介護予防として訪問介護サービスを利用する人の割合は、小規模事業所が高く大規模事業所が低いという二極分化の傾向もうかがえます。
【次期介護保険報酬改定の動向と小規模事業所のゆくえ】
平成18年度の介護保険制度の改正から3年が経過しようとするなか、平成21年度の改正に向けた審議が「社会保障審議会/介護給付費分科会」ですすめられています。
現在のところ、焦眉の課題である介護人材の確保へ向け、大都市部や過疎地域小規模事業者の報酬の見直しなど、全体で3%の報酬引き上げの方向で審議されているようです。
そのほか訪問介護サービスについても、「経営の改善」や「業務の効率化」のため
①サービス提供責任者(サ責)の人員配置基準の緩和(非常勤者の登用等)および報酬評価
②特定事業所加算にかかわる利用者負担の軽減
などが検討課題としてあげられていますが、訪問介護サービス提供体制にしめるこれら小規模事業者の役割なども、合わせて検討する必要があるのではないでしょうか。
また、事業者も地域での協業化など検討していく必要があるのではないでしょうか。