管理者としての今後の課題
人材確保とみんなが笑顔になれる職場づくりへ。
今日はご利用者さん宅に月1回の問診訪問。自転車で軽快に到着。
―スタッフ面での問題点を挙げていただきましたが、今管理者でもある石川さんが他に改善すべき点や力を入れて取り組んでいることなど何かありますか?
経営部分での黒字転換と黒字化の安定です。自分の知る、近所のヘルパー事業所の多くが潰れていくのを目の当たりにしながら、ニーズは高まっている中で、ヘルパーが不足しているこの業界そのもののあり方を、改めて問う必要があるのではないかと。そこで、私は経営面や運用の部分も重視しながら、色々提案・改善を試みてきました。
笑顔で「おじゃまします~」とお宅に入っていく石川さん。
―その1つが、先程話してくださった「介護のプロ」を育てることですよね。他にも何か?
1対1でご利用者さんと向き合う訪問の仕事の成功の鍵を握るは、やはり人材ありきです。それまで60代ヘルパーが多かったところを、30~40代の若いヘルパーを積極的に採用し、事業所内のフットワークを軽くしました。今までのイメージと印象が変わったことでご利用者さんにも好評いただき、あとは先程の情報発信力ですよね。「きたざわ苑にお願いしたら、大丈夫」という印象を定着させ、信頼を得ることで、少しずつ黒字に転換することができました。そして、最近では私がずっと提案し続けてきた「登録ヘルパーに早朝夜間手当をつける」こともようやく実を結びつつあることです。
ご利用者さんと楽しく会話をしながら、現状把握。今後のケアについてどうするかなどは、苑に戻ったら法人のアセスメントシートに落とし込んで、分析・判断していく。
―それはすごいですね。それはどういった理由からその提案に至ったのですか?
今後、社会の役割として、ヘルパーが夜間・深夜・早朝援助も担うに当たり、そこを率先してやれる人材を最大限に揃えておきたかったからです。例えば帯でも毎日同じ時間の援助依頼があっても、「○曜日のこの時間だけは、スタッフの調整がつかず入れません」などとなると、全て依頼を受けることができる他事業所に変えられてしまうケースもあります。出来ない部分を、直行直帰の登録ヘルパーが1つでも拾えれば、ご利用者さんを逃さずに済む。これは経営面においてすごく大事なこと。何より出来るだけ『きたざわ苑』でケアをお願いしたいと言ってくれている確実なニーズがそこにはあるわけで、対応できないのは体制としても問題ですよね。しかも、他事業所では、すでに手当をつけている事業所も多いので、同じ土俵に立つ意味でも、また、「きたざわ苑は、24時間ケアに真摯に取り組んでいる」というアピールの為にも、必要不可欠な提案だと思ったのです。
モニタリングのあと、お風呂掃除を素早く。ケアはスピードと正確さが大事。
―それはすんなりOKになったのですか?
いやいや、何度も途中くじけそうになるぐらい大変でした(苦笑)。その中で、施設長がすごく応援して下さり、経営面では、手取り足取りいろいろなことを丁寧に教えて下さり、とても頼りになって、心から尊敬しております。法人内でも、経営品質向上の研修があり、そこで経営コンサルトの講師から、貴重な経営ポイントを色々学ばせてもらっているのですが、ある提案をする時は、聞く人全てが納得できるような「根拠」が必要で、その際「数字」など、目に見えて分かりやすい「データを作成」するよう、アドバイスを受け、パワーポイントでプレゼンしたりと、色々工夫しました。
実際、登録ヘルパーに手当をつけても、例えば、利用者の介護レベルが高くて、登録ヘルパーの実力に追い付かない状態だったら、マッチングせず、実際に働いてもらわなければ賃金は発生しないので、マイナスにはならないんです。むしろニーズの取りこぼしを防いで、プラスになる。そうしたこと含め、今ではヘルパー部門の取りまとめの副もやらせていただき、法人全体のヘルパー改善のため、少しずつ改善に向けて取り組んでいる最中です。でも何よりも、正吉福祉会は、職員(人財)を大事にし、現場の職員の声にも耳を傾け、根拠に基づいた納得のいく良い意見やアイディアはどんどん吸い上げる方針の法人なので、本当に働き甲斐があり、いちスタッフであることに日々感謝をしています。
―すごい行動力ですね。今後も色々な課題と積極的に向き合う石川さんが想像できます。
全ては施設長が私を採用する際に言った「笑顔にできますか?」という言葉にかかっているんだと思うんです。1つ間違うと笑顔じゃなくなる。働くスタッフも笑顔で、ご利用者さんも笑顔でい続けられるための努力は惜しみたくないです。それに、今後は在宅介護が主流になるなかで、サ責という仕事はすごく重要な役割を果たすと考えています。でも今の日本の制度においては、サ責に対する認識と理解度がとても低い。世間的にもっと認められる存在であるべきだと思うので、そうした意識レベルを底上げできるようにも、私自身も今後も、もっと勉強していって尽力していきたいですね。また、今回取材を受けた社福協の開催する研修は、講師の方々が皆すばらしく、毎回参加する度にいい刺激と明日への活力をいただいております。ヘルパーやサービス提供責任者を陰で支えて下さっている講師の方々の期待に応えるためにも、使命をもって頑張っていきたいと思います。
編集後記
訪看、ヘルパーステーション、介護支援センターという並びでオフィスはひと続き。
石川さんにとって「ありえない」と思っていた高齢者介護。それがいざトライしてみると人生観を変えるほどのやりがいにつながり、今では迷いなき道となっている。出会い1つで大きく人生は変わるのだな、と感慨深いものがありました。人材の出入りが激しい(特にサ責業務)ヘルパーステーション全体を笑顔にしていくためにも、今後社会全体の仕組みを見なおしていくべき、と問う石川さんの言葉がとても印象的です。
今回、取材にご協力いただいた石川展世さんをはじめ、社会福祉法人正吉福祉会 ホームヘルパーステーションきたざわ苑』職員の皆さまには心からお礼を申し上げます。
「へるぱ!」運営委員会一同