■「ありがとう」は魔法のひとこと
▲事務処理と記録を行う木原さん。
―この仕事をやっていて、大変だなぁと思うことは?
木原さん:人を育てていくことが大変ですね。利用者様との関わりよりも大変かもしれません。今の自分の立場ではそれが一番難しい気がします。自分ができるからといって周りが同じようにできるとは限りませんしね。日々、レベルアップに向けて指導を続けることの難しさを実感しています。
―この仕事をやっていて良かったと思う瞬間って、どんなときですか?
木原さん:月並みですが、やっぱり「ありがとう」と言われる瞬間ですね。認知症が進んでいらっしゃる方の場合、私たちスタッフの顔も名前も分からないケースも少なくありません。でも、最初は私たちのお世話をとても嫌がっていた方が、ちょっとしたことがキッカケで受け入れてくださったり、急に何かを思い出したかのように「ありがとう」とおっしゃったりするんですよね。「ありがとう」は人を幸せな気持ちにする魔法の一言だなぁって、心から思います。
▲スタッフ間の連絡に使う「伝達表」は何より大事だという。
―これから先、どんな人たちに介護の世界に入ってきて欲しいと思いますか?
木原さん:自然体であまり熱くなりすぎず、かといってドライになりすぎず、若い柔軟な感性を持ったまま飛び込んできて欲しいですね。「介護」という言葉だけにとらわれて欲しくないなぁと思います。確かに、入浴や排泄の支援など大変なことはありますが、それ以外の部分もしっかり見て欲しいんですよね。介護の現場には、学ぶべきものが本当に沢山あります。私自身、利用者様のお世話を通して「人としてどう生きるか」を以前にも増して考えるようにもなりましたし、自分自身と真剣に向き合うことの意味や大切さも痛感しています。
▲利用者様と廊下を歩く木原さん。
そして、業界内に若い男性スタッフがもっと増えるといいなぁと思います。介護従事者は女性の割合が高いのが現実ですが、男性の感性と力もやはり必要です。若い力がすくすくと育つような土壌が業界全般に整備されたら、もっとこの業界は良くなるだろうなと思います。
最近のことですが、私の娘が高校3年の夏休みにヘルパー2級の資格を取ったんですね。今は別の仕事に就いていますが、いずれは介護の仕事をやりたいと言っています。少しは私の影響もあるのかなぁと思うと、やっぱり嬉しいですよね。
―最後に。介護の仕事を辞める可能性は?
木原さん:辞める気はこれっぽっちもありません。体が動かなくなったり、私自身が介護を必要とする日が来るまでは、ずっと現役で働いていたいなって思います。
■編集後記
▲本当に明るいスタッフの皆様。
取材に伺ったのは桜の若葉の青さが眩しい4月でした。今回の「グッドタイム南天神ヘルパーステーション」では、これまでの取材先にない訪問スタイルで、また新しい発見と学びがありました。また、高齢者が心地よく過ごせる空間作りというものを、改めて考えさせられました。
1日密着取材を通し、利用者の方々や入居者の皆さんともお話をする機会もありました。また、木原さんをはじめ、グッドタイム南天神ヘルパーステーションのスタッフの皆様、株式会社創生事業団のスタッフの皆様にも色々とお話を伺うことができ、本当に感謝いたしております。みなさま、本当にありがとうございました。この場を借りて、御礼申し上げます。
へるぱ運営委員会、一同。