(4) 僕たちの仕事は、可能性の芽を育むこと。
▲博物館行きのバスの時間まで、事業所内でゲームをすることに。
「楽しく一緒に遊ぶことも、僕らの仕事です」と井野さん。
―お話を伺っているだけでも幸せな気持ちがしてきますね。
井野さん:人間対人間のつながりですからね。当然、ラクではないですよ。けれど、ご本人の気持ちを最優先に考えて、ご家族やスタッフ全員で話あい、それを整理しながらサービスを提供しています。けれど、遊ぶことが仕事なんて楽そうでいいなって言われることもあります。
▲壁には利用者さんの書いた絵が並ぶ。
―「気楽そうだ」といわれちゃうんですか?
井野さん:外出で水族館に行ったり博物館に行ったり、事業所ではゲームで遊んだりするでしょう?それに、毎月1回は全員でどこかに出かけますしね。お祭りだとか小旅行だとか、その時々で違うんですけれどね。だから、ただ一緒に遊んでいるだけに見えちゃうんでしょうね。そういうのを聞くと、少し寂しくなりますね。
僕たちは利用者本人の希望にあわせた行動プランを立てて、それに付き添って援助します。本人がちゃんと考えられる場合には、一緒になってプランを考えます。利用者さんが遊ぶことを楽しめる環境を作るために周囲に気を配らなきゃいけないし、問題行動が起きないように細心の注意を払わなくちゃいけません。また、問題行動が発生した場合にはその事実を利用者さん本人に分かってもらわなきゃいけないんです。
外出支援というのは利用者本人の楽しみなので、できる範囲でそれを叶える準備をしますが、内容によっては法的にできないこともあります。ごく普通の人なら「法的に無理だ」とひとこと言えば納得も諦めもできるのでしょうが、そうもいかない。利用者さんに何でダメなのかを分かってもらうのって、本当に大変なんですよ。
これら全てを含めて、どんな目的のためにどんな遊びをするのか、何ができるのか、今度は何に挑戦しようかと、行動プラン作成から考えるんですよね。だから、単純に遊んでいるわけじゃないんですよ。
一緒に遊ぶことで利用者さんに楽しんでもらう、自分らしく時間を過ごしてもらう。これも僕たちの仕事です。けれど、それだけじゃない。利用者さんが成長するために必要な支援をすることが僕ら本来の役目です。僕たちの仕事は、利用者さんの可能性の芽を育むことですからね。
遊びながら何かを掴んで欲しい、そのために僕らが存在しているんだって思っています。
編集後記
▲「ライフサポートそら」の玄関先にいたアマガエル。
2007年9月6日。関東直撃の恐れのある台風9号が接近する中、今回の取材は行われました。外の雨は降ったり止んだり。けれど、井野さんの笑顔はそんなお天気さえも吹き飛ばすほど眩しかったと記憶しています。
障害児・者をメインとした介護事業所への取材は今回が初。利用者さんと一緒にゲームをしたりお買い物に出かけたりしたのはとても貴重な経験でした。
▲社会福祉法人 ウイング ライフサポートそらのみなさん。
取材にご協力いただきました「社会福祉法人ウイング ライフサポートそら」の皆様、ならびに取材に快く応じてくださった利用者の皆様にこの場をお借りして御礼申し上げます。