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サ責に求められるもの

第8回 専門的コミュニケーションを用いたチーム作り       2019/11/25

コミュニケーション力は、人間が生きていくうえで最も必要なスキルです。家族、友人、近所付き合い、仕事などを円滑に保つ鍵であり、プライベートと仕事、どちらの時間もコミュニケーション力が高いほど充実するといっても過言ではありません。

ところで一般的な生活上のコミュニケーションと職場のコミュニケーションでの留意点は同じでしょうか?

生活上のコミュニケーションは、仲良く、楽しく、有意義に過ごすことが主な目的です。職場はそれに加えて、仕事で生じた問題を解決することや、組織の理念に沿った行動や互いの成長を促すことも目的として掲げる必要があります。これらの目的を意識した意図的なコミュニケーションが「専門的コミュニケーション」といえます。

訪問介護事業のリーダーであるサ責は、この専門的コミュニケーションを用いて、「利用者」「ホームヘルパー」そして「組織」を守りつつ、成長させていかなければなりません。

日本社会では、仕事に対するモチベーションが職場の人間関係に左右される傾向があります。つまり、感情を伝達する非言語を適切に用いた情報収集や情報発信をすることで信頼関係を築く必要があります。訪問介護事業の場合では、サ責の適切な非言語コミュニケーションの活用が良好なチームを創り、人間関係を良好にし、組織を活性化させると考えます。

サ責は、チームメンバーのヘルパーたちが何を考え、どのような気持ちで今ここにいるかを把握する必要があります。専門的コミュニケーションを用いて、ヘルパーの何気ない言葉や態度から利用者の課題やヘルパー自身の問題に気づくことができます。サ責の柔らかな物腰、信頼を感じさせる言葉かけは「話しやすさ」をヘルパーに感じさせることでしょう。つまり、ヘルパーから得られる情報量は、サ責の雰囲気に影響される、と理解し、真摯に向き合うことをおすすめします。

サ責のヘルパーに対する労いの気持ちは、深い傾聴につながり、良好な関係作りに繋がります。一方、ヘルパーの仕事に対するモチベーションは、利用者やサ責に信頼され、期待されることで維持・向上します。これらを理解して積極的にヘルパーの言動に耳を傾けてください。

サ責の専門的コミュニケーションがリスクマネジメントや実践における問題解決にも役立ち、チーム力の強化やサービスの質向上を実現させるでしょう。離職率の減少も、サ責の専門的で意図的なコミュニケーションによって可能になるはずです。

ヘルパーが悩むとき、一緒に悩みましょう。ヘルパーからの質問に対しては、一緒に考えるようにしてください。サ責の考え方や事業所の方針などに含まれる意味も共に考える時間を持つことが重要です。ヘルパーからの些細な質問に即答するのは控え、「なぜそう考えたのですか?」「その疑問はどんな時に生じましたか?」と訊ねてみましょう。サ責の考えを示すのは、本人の考えを確認してからです。「悩む」「苦しむ」「考える」ことは成長の証と理解し、ヘルパーを「守り」「支え」「育てる」専門的なコミュニケーションを図りましょう。

サ責の専門的コミュニケーション力こそが、訪問介護事業所のサービスの質の高さとイコールと認識し、専門的コミュニケーションを意図的に活用しながらチーム力の強化を目指してください。

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コラムニスト紹介

松井 奈美

植草学園短期大学 教授

プロフィール

東洋大学大学院福祉社会システム専攻修了。千葉県習志野市福祉課に入庁し、介護職員として勤務。浦和短期大学講師、新潟医療福祉大学講師、日本社会事業大学社会福祉学部講師、准教授、同実習教育研究・研修センター副センター長などを経て、平成25年4月より現職。 主な研究領域は在宅介護実践論、チームケアにおける連携、訪問介護サービスの質の向上に関する研究等。

『知っておきたい在宅ターミナルケア』(社福協)のほか、『改訂版サービス提供責任者の必須知識』(社福協)ではサービス提供責任者(サ責)における実務内容の項を執筆するなど著書、論文多数。

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